脱プラスチック実現へ 県内初プラスチック被覆を使用しない水稲一発肥料を商品化

JAあづみ
商品化した水稲一発肥料を手にする相馬和揮衛常務理事(左から2番目)
商品化した水稲一発肥料を手にする相馬和揮衛常務理事(左から2番目)

JAあづみと肥料メーカーの片倉コープアグリ株式会社、全農長野は、被覆肥料のプラスチック殻を使用しない水稲一発肥料「あづみ水稲一発肥料zerocoat(ゼロコート)」(1袋=15キロ)を県内で初めて商品化した。近年課題となっている「脱プラスチック」の実現を目指し取り組みを始めた。3年間実施した試験結果は、従来の一発肥料と同等の収量と品質を確認。2026年1月から順次生産者のもとに届く予定だ。
JAに出荷している生産者は2581戸。管内の約2000ヘクタールで栽培し、25年は約1万1100トンの集荷を計画した。1等比率は全国トップクラスの95.1%。
追肥が不要の一発肥料は、省力化や施肥量の削減が利点で、管内生産者の約8割が使用している。プラスチックを使用した被覆肥料(以下、プラスチック被覆肥料)は、プラスチックで肥料を被覆することで、肥効の調整が可能になる特性を持つ。太陽光や微生物によって土壌中での分解がされるよう工夫されているものの、分解までに相当の時間を要し、肥料成分が溶出した後のプラスチック殻は水田の外へ流出してしまう。生産者からの疑問視の声もあり、こうした理由から環境面への配慮を踏まえ、脱プラスチックを実現しようと22年から試験を開始した。管内5地域の営農指導員や生産者が協力した。
ゼロコートの主原料は、片倉コープアグリ株式会社の「マイルドキープ(反応緩和剤入化成)」。マイルドキープは、尿素入り肥料の分解を抑制する反応緩和材を使用していて、この成分が尿素分解酵素の活性等を抑えることで、窒素の急激な揮散や流亡を低減する。その結果、プラスチック被覆肥料を使わなくても、肥効が安定的かつ長期的に持続し、効率的な施肥が可能となる。肥料の配合は、窒素・りん酸・加里・苦土・けい酸。配分量はJA独自の配合。試験結果を基に、営農指導員、米穀課、全農らで構成される会議で決まった。
3年間の試験では「コシヒカリ」で従来の肥料と収量・品質・食味の違いなどを調査。従来の肥料と同量を散布したところ、従来と比べ生育に顕著な違いは見られず、収量や食味も大きな差異はなかった。
制作に携わったJA営農経済事業部米穀課の西牧宏代理は「脱プラスチックや海洋プラスチック問題への関心が高まる中、生産者から寄せられた疑問の声を受けて取り組みを進め、商品化に至ったことは大きな意義がある」と話す。続けて「本県は海なし県だが、川の先には海がつながっている。肥料殻が水田外へ流出すれば、マイクロプラスチック問題を引き起こし、環境汚染の一因になりかねない。今回の肥料が普及することで、持続可能な農業の実現に向けた一歩となれば嬉しい。環境にやさしく、より安全な稲作を目指していきたい」と思いを語った。
価格は生産者の負担を軽減できるよう最小限に抑えた。パッケージには、営農指導員からの案を採用し、脱プラスチックで環境への配慮が伝わるよう、両手で地球と稲穂を両手で守っているイラストを採用した。ゼロコートの商品化に伴い、令和8年産から従来使用していた肥料からの一本化を進め、全面的に切り替えた。

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