JA上伊那がアスパラガス10億円産地に向けて、JA上伊那野菜選荷場(南箕輪村)構内に整備を進めていた「JA上伊那アスパラガス集出荷貯蔵施設」が完成した。これまで生産者が個別に行っていた選荷や選別の作業を同施設で共同選荷することで生産者の作業負担が軽減。全国で初めて人工知能(AI)を活用した自動選別機を導入し品質の安定化を図る。3月4日には、同施設の竣工式が現地で開かれた。
アスパラガスは同JAの主力品目のひとつで、長野県一の生産量を誇る。これまでの生産者が個別に行っていた選荷や選別では、栽培全体の作業時間の40%を荷造りや調整作業が占め、生産者からは労力軽減を求める声が上がっていた。また、生産者ごとの規格のばらつきや夏場の鮮度低下が課題だった。
同施設には、1時間に3万本を判別できるAI画像処理自動選別機1台と、1時間に1800束つくれる計量結束機3台を導入。また、夏場でも鮮度を維持できるよう、選別室と直接つながる予冷庫も設備した。選別機は、営農支援システム「あい作」と連携しているため、生産者はタイムリーに選荷結果を確認することが可能となる。共選化することで、新規生産者の初期投資の軽減につながり、さらなる生産振興と品質の安定化で、上伊那ブランドの構築を図る。
設備導入には、国庫補助事業「強い農業づくり総合支援交付金」を活用。施設面積は349.79㎡で、事業費は1億3500万円だ。
竣工式には、西村篝組合長をはじめとするJA役職員や、JA野菜部会役員、管内市町村代表者ら約70人が出席。竣工式に先立つ神事では、それぞれの代表者が順番に玉串を捧げた。式典後には実際に機械を動かし、出席者は性能を確かめた。
竣工式で西村組合長は「共選化で労力を軽減できる分、栽培面積を拡大してほしい」とあいさつ。JA野菜部会アスパラガス専門部の野澤典生専門部長は「目標の『10億円産地』はもちろん、共選化することで品質管理を徹底して、お客さんに届けることができる。自信を持った上伊那のアスパラガスを少しでも多くの人に届けたい」と話した。
同施設は、収穫の最盛期を迎える4月1日から本格稼働する。共選の利用率は現在約61%を見込み、5年後の完全移行を目指す。選別機は今後、反収向上に向けて生産者の登録を進めている栽培管理システム「圃場カルテシステム」との連携も見込む。連携することで、等級や収量の減少から分かる立茎開始時期の見極めなどに役立ち、正しい栽培管理で生産者のさらなる所得向上を目指す。