畑に植えて育てる陸(おか)ワサビ初収穫 生産者7戸増 栽培面積42アールに拡大

JAあづみ
陸ワサビを収穫する浅川さん
陸ワサビを収穫する浅川さん

JAあづみは15日、地元のワサビ加工品メーカー(株)マル井(=安曇野市)と連携して栽培している陸(おか)ワサビの収穫が始まった。
同JAと同社は3年前から実証栽培を始め、2021年秋から産地化を目指して本格栽培に乗り出した。生産者の募集強化や労力負担が少なく、無加温のハウスで生産コストを抑えられる利点などから生産者は昨季対比7戸増え15戸、栽培面積は同比9アール増の42アールに拡大、産地化に向けた取り組みとして軌道に乗っている。収穫作業は7月中旬頃まで続く見込みで、出荷数量は約30トンを予定している。
この日は、同市穂高の浅川晃一さん(54)のビニールハウス約2アールで収穫した。収穫前に開いた目揃い会では、同社担当者が収穫方法や選別時の注意点などを説明。鎌を使って50㌢ほどに育ったワサビを根元から刈り取った。土を払い、黄変、病気部の葉などを除去して出荷コンテナに入れた。収穫したワサビは同社が全量買い取り、主に茎や根茎の部分は刺し身用の小袋やチューブタイプ製品の加工わさび原料へ、葉は菓子原料になるという。
栽培2年目の浅川さんは「春先の高温の影響で丈や茎の太さは去年よりも劣るが生育自体は順調。他の作物に比べて売れ残りの心配もなく、価格が安定しているのはありがたい」と話した。
今季から栽培している髙橋和也さん(47)は「JA広報誌や他の生産者に話を聞いて作ってみようと思った。契約栽培で単価が安定していて、苗の心配や栽培管理に手間も少ない。西日が当たらない場所なども有効活用できる。将来性は凄くある」と期待を寄せた。
2005年頃、安曇野一帯では、豊富な湧水で育てる「水ワサビ」を中心に、年間約1400トンの収穫量があったが、生産者の高齢化や異常気象の影響などで年々減少し、22年は約700トンに半減している。全国的にもワサビの生産量が減る中、陸ワサビの生産量の拡大は同社にとって地元産原料の安定調達につながる。
同社の松田洋介研究室長は「なにを取っても収量が重要。生産者が安心して生産できるよう異常気象時の対応策などを独自に研究してきた。生産者やJAと協働し、生産拡大したい」と意気込んだ。
陸ワサビは湧き水などで育てる「水ワサビ」とは異なり、畑に植えて育てる。夏の高温期を避けて秋頃に苗を定植し、翌年5月中旬~7月上旬に収穫する超促成栽培。農閑期を中心に栽培できて栽培期間が短く、生産者の労力負担が少ない。寒さに強い特性から冬場もハウス内は加温しないため、栽培コストが抑えられるなどの利点もある。
JAでは引き続きJA広報誌や営農指導員などを通じて6月中に生産者を募集し、7月には栽培講習会を開き、生産拡大を図る。
営農経済事業部農産課の清澤理課長代理は「荒廃地の有効活用策として陸ワサビの生産拡大に取り組み始めた。これからも生産量を増やしていきたい」と述べた。

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