輪ギク栽培一筋53年 三井静明さん/数々の品評会で入選、優良品種づくりも

JA信州諏訪
きくの梱包作業をすすめる三井さん
きくの梱包作業をすすめる三井さん

富士見町の三井静明さん(73)は、JA信州諏訪管内の主力品目「輪ギク」を栽培している。品評会入選の常連で、地元産の優良品種づくりにも力を入れる。歴代の生産者が築き上げた「きくの一大産地 信州諏訪」の伝統を守り続けている。
三井さんは農業の専門学校を卒業後、20歳の時に就農。20アールの露地できくの栽培を始めた。同町乙事地区は当時からきくの産地だったため、「先輩農家に教わったおかげで、多くの技術を習得できた」と振り返る。
「地元オリジナルの優良品種をつくりたい」という思いから、1980年代に黄色の「栄光」や白色の「静山」という品種を育成。それからしばらくは従来品種の栽培・出荷に勤しんでいたが、品種育成を独自に行う県内農家への訪問や、仲間からの薦めがきっかけで1999年から再開。2014年に黄色の「天空の輝」、2018年に紅色の「諏訪クイーン」が完成した。両品種ともに現在、多くの生産者が栽培しており、JAを代表する品種だ。
育種は9月下旬から10月上旬、交配親となる品種の花弁内にある花柱に別品種の花粉を付着させて行う。受粉が成功すれば、翌年1月頃に種子が採取でき、花色や草姿など納得がいくまで長年かけて作業を続ける。「気に入る品種ができるかは運のようなもの。難しく、繊細な作業だが、そこが楽しく、大きな魅力でもある」と語る。
病害がなく、草姿が整った花きの出荷を日々心がけ、品評会への出品も毎年行っている。これまでにはJA全農長野と同花き専門委員会主催で年1回開かれる「信州フラワーショーサマーセレクション」で最高賞となる農林水産大臣賞を6回受賞。2022年は、「2022なんしんフラワーフェア」で長野県知事賞、「第17回信州諏訪農業協同組合フラワーショー」で長野県諏訪地域振興局長賞、「第52回信州フラワーショーサマーセレクション」で全農会長賞を受賞した。
現在、妻と2人で露地・ハウス合わせて約28アール、約12品種を栽培。今年度は10月上旬まで出荷を続けるとのこと。
三井さんは「新規・若手就農者が頑張ってくれているのがうれしい。自分も無理のない範囲でこれからもきくの栽培を続け、皆で産地を守っていきたい」と話している。

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