安全・良質なブドウを研究・提供したい 長野県大町市・福嶋葡萄研究所 福嶋博幸さん

JA大北
美しく仕上がったシャインマスカットと福嶋さん
美しく仕上がったシャインマスカットと福嶋さん

長野県内でも生産が盛んになっている「シャインマスカット」などのブドウ。種なしや皮まで食べれる手軽さと、甘みも十分にあることから人気となっている。県内でも各地で産地化が進むなか、水稲栽培やリンゴなどの果樹栽培が盛んとなっているJA大北管内の大町市でも、産地化に向けて栽培が行われている。
同市で生食用ブドウの栽培に取り組む福嶋葡萄研究所代表の福嶋博幸さん(58)。2018年より木を新植し、現在、シャインマスカットやピオーネなど全5品種を120アールで栽培している。福嶋さんは約20年前に水稲栽培を主として行う専業農家である家業を手伝うため、会社を退職し、就農。水稲農家として栽培に携わるなかで、近年、水稲栽培に関わる補助金制度も少なくなったことや米価も下落傾向であること、大型農業機械であるトラクターやコンバインなどの更新・維持管理管理に多額の費用がかかることから、水稲にかわる新たな作物への栽培を決意。そこから、食べた時の美味しさと高値での取引されているシャインマスカットと出会い、栽培に向け、動き出した。
まず福嶋さんが向かったのは中信地域のブドウ産地である塩尻市。様々な農家の元に視察へ訪れるなかで、多くの農家が課題としていたのは「温暖化による気候の変化」。その話を聞き、「大町市なら、気温の寒暖差もあり適地だろう」と思った福嶋さん。その瞬間をきっかけに、本格的に塩尻市の農家の元へ研修に通い始めた。
福嶋さんの栽培の特徴は、作業の省力を意識したことによる「垣根方式(平行整枝短梢剪定栽培)」での生食用ブドウの栽培だ。一般的に同方式はワイン用ブドウ栽培に用いられ、通常生食用ブドウに用いられる「棚方式」とは木の仕立て方が異なる。主流の棚方式だと天井を這うようになるため、上を向きながらの栽培が多くなる。一方、垣根方式だと横一列に、腰くらいの高さに身を着けるよう仕立てるため、座りながらの作業も可能で、楽な体制での栽培管理が可能となる。また、木を密植させての栽培となることから、棚方式の2倍の本数が定植でき、収量も安定する。栽培開始前には、例も少ないことから、「うまく成らない」との声もあったが、福嶋さん自身のなかの「疑問」を推進力に垣根方式での栽培を開始。結果は玉の大きさ、糖度ともに良好なものに。「生食用ブドウの既成概念を破った瞬間」だと福嶋さんは語る。
福嶋さんの園では今年、シャインマスカットを中心に10月中旬頃から
収穫を開始。作業は概ね11月上旬まで。昨年までの試験販売を経て、今年より一般向けに本格的に販売を開始している。ブドウのパッケージにはブランド名とも呼べるテーマ「北アルプスの清流育ち」。園内の直売所での販売や、同市のふるさと納税返礼品での取り扱いを中心に出荷している。福嶋さんは「引き続き栽培知識を身に着けていきたい。ブドウの栽培を通して、産地化と地域の活性化につながれば」と話す。

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