長野市松代町清野でトマト栽培に励む湯本翔大さん(21)で、トマトの出荷が最盛期を迎えている。湯本さんは東京都日野市出身、単身で同町に越し、20歳で就農。2年目の今年、主力「トマト」は、6月16日は20ケース(1ケース約10kg)を収穫。7月上旬までに8トンの出荷する見込みだ。
中学生の時の農業体験学習を機に農業に惹かれ、「いずれは農業関係の仕事をしたい」と都内農業高校に進学。ただ、高校周辺に農地が少なく、より農業環境の整った進学先を探し、父が長野県出身であることを縁に、長野県農業大学校実践経営者コースに進学、寮生活を始めた。高校時代に水耕栽培でトマトを育てた経験から、「手間のかかるトマトは、自分に合っている」とトマトを専攻。授業の一環で、同町のトマト農家 関川晃さん(58/当時55)のもとで実習し、栽培技術・経営を学んだ。当初は農業法人への就職を検討していたが、実習しているうちに「生産者として独立、就農したい」と考え、学生1年目の冬、関川さんに相談。関川さんからの紹介を受け、引退を検討していた清野の農家から8アールのハウスを借りることができた。学生2年目は、このハウスの半分の面積でトマトを栽培し、実際に出荷販売につなげるなど、より実践に近い実習。また、教諭らの支援の下、就農後5か年の営農経営計画を樹立し、この計画のもと、行政の補助を受けられた。就農に難色を示す両親には、熱意を込めてこの計画を説明。「やってこい」と後押しを得た。卒業と同時に20歳の春、就農。8アールのハウスで春から夏はトマトを、秋から冬はキュウリを栽培、また、5アールでアスパラガスと20アールで水稲栽培にも取り組んでいる。
就農1年目は、実習よりも2倍の面積での栽培で、作業遅れに苦しむこともあったが、ほぼ計画通りの収支を確保。大学校の寮生活から、一人暮らしの環境になり、慣れない家事にも追われていたが、「何とか生活が出来ていたからよかった」と振り返る。
流れをつかんだ今年、5月中旬からトマト収穫が本格化。ピーク時は休みなく、収穫・荷造り・出荷を一人でこなす。昨年よりも定植本数を増やしたが、病害の発生やトマト市況の低迷と苦境。ただ、「早めの対処が必要だってことが分かったし、ダメだった部分は来年に生かせば良い」と前向きに、出荷作業に取り組んでいる。
そんな湯本さんが大切にするのは、関川さんからの「周囲への感謝を忘れずにやっていくこと」という教え。「ハウスを貸してくれたり、支えてくれる地域の方、学校や各機関の方、そして関川さんも...周囲の方が手を差し伸べてくれたおかげで、今の自分があるので...。本当に関川さんの言う通りで、本当に感謝です」。関川さんは「まだまだ社会人として半人前の部分もあるけれど、東京から農業をやりたいと来てくれることが本当にうれしい。これから地域農業を背負っていく大切な存在、地域で育てていきたい」と話す。
湯本さんは、栽培技術の向上はもちろんのこと、当初の計画では、2年後までに施設を増やし、収量を上げる計画を立て、これに向かって施設の確保等、着々と準備を進めている。「農業は天候のリスクもあるけれど、頑張ってこなした分だけ成果があると思う...稼げないっていうけれど、やり方次第だと思うし。自分が語るのはまだまだ全然経験が足りないですけどね」と笑顔を浮かべる湯本さん。その笑顔は、地域の農業に明るい光を照らしている。