長野市若穂の若穂住民らは6月12日、「長野市綿内産ふっこう豆腐」を発売した。「令和元年台風19号災害」の豪雨で水没した千曲川河川敷を地元住民らの手で復旧し、そこで栽培した大豆「青入道」を活用。地元農家や住民、小売業者、JAグリーン長野が連携・協力して商品化し、地域農業の「復興」の象徴に掲げた。地元のA・コープ店舗や地区のイベント、共同購入などで販売し、「復興への思い」を共有する。
若穂綿内では、千曲川河川敷の農地約50ヘクタールが濁流にのまれ、水がひいた農地には、漂着ゴミや土砂の流出で壊滅状態。被災から約1か月後、若穂地区住民自治協議会の綿内区長会が「被災地支援活動 千曲川河川敷一斉清掃」を企画し、地元農家や住民、JA、ボランティアなどが、河川敷内のゴミの片づけや土砂の運び出し、農道整備を実施。多くの農家が希望の光を見出した。
ただ、離農の声も聞かれ、区長会や農家らが、農地の集約・有効活用を検討。2020年度に農業法人や大規模農家に8.5ヘクタールを集約。法人では、大豆や小麦の生産を目的に、3.5ヘクタールに大豆を作付け、11月に3トンを収穫した。
収穫を機に、被災支援活動や集約化の中心となった長野市若穂綿内地区区長会長の竹内守雄さん(71)が商品化を発案し、住民らからの賛同を得た。JAで集出荷した大豆を、地元豆腐メーカーの(株)キタコーが製品化。大豆の色が表われた青みがかった外観で、1丁330g、木綿と絹ごしの2種が完成。5月に関係者が試食し、「甘みがあり、とてもおいしい」と好評を得、発売にこぎつけた。
12日には地元A・コープ3店舗(ファーマーズ篠ノ井・ファーマーズ南長野・松代)で販売を開始。13日には、長野電鉄屋代線旧綿内駅一帯で初開催した綿内中央広場開設記念イベント(綿内まちづくり実行委員会主催)の「青空トラック市」で300丁を販売。あいにくの雨天だったが、生産者による直売組織「若穂ふれあい市」の売り場ブースに「絹」「木綿」の両種を並べ、JA職員も対応を支援。次々に来場客が訪れ、40分余りで完売した。購入した女性客は「ふっこう豆腐と聞き、ぜひ購入したくて来た。家族で味わい、復興を少しでも感じたい」と話した。
竹内さんによると製造量は、約15,000丁を計画。A・コープ3店舗を中心に、土・日のみ、両日あわせて500丁限定(税込150円)で販売する。北信管内のA・コープ店舗に取り扱いを広げるほか、地域での共同購入、学校給食への提案もすすめているという。竹内さんは、「無添加、遺伝子組み換えもなく、消費者のみなさんに安心して食べていただける。復興の思いが詰まったこの豆腐を、多くの方に食べていただき、農業の維持・発展につながれば良い」と願いを込める。