産地の活性化を目指して接ぎ木をする参加者
JA松本ハイランドりんご部会は、松本市今井のJA今井果実共選所で、リンゴの新わい化栽培に使う苗の接ぎ木をした。生産者ら20人が共同で作業し、2日間で「つがる」や「ふじ」4000本を接ぎ木した。接ぎ木苗は専用の圃場(ほじょう)で育苗し、細い側枝を多数持つ「フェザー苗」に仕立てた後、生産者に配布する予定だ。
接ぎ木の共同作業は昨年度から試験的に開始し、今年度から本格化させた。接ぎ木苗は台木に「M9ナガノ」を使用。台木の断面に縦に切れ込みを入れ、そこに表皮を削った4センチほどの穂木を差し込み、テープで固定する。今年は16日にも作業して計5000本を生産する予定だ。
JAはこれまで、育苗を青森県の「原田種苗」に委託していたが、JA管内で新わい化栽培への改植が進むにつれて苗の需要が高まり、安定供給を図って共同での苗生産を始めた。同部会の野村昌利部会長は「産地全体の生産量が落ちる中で、新わい化栽培を振興して収量を向上させて農家の手取り確保につなげたい」と意気込んでいる。
慣行栽培より密植させる新わい化栽培は、初期の若木から収穫が見込めるのが利点。木を小さくまとめることで農薬代の経費を半減できる上、一つ一つの果実に光が当たるために高品質な生産を期待できる。高所での作業も少なくなり、高齢者でも安全に作業できて栽培面積を増やすことも可能だ。
改植後2年目に10アール当たり1トンの収量が見込め、3年目には現行栽培と同等の2トン前後、4年目からは3トン以上の収穫を期待できる。JAは2010年に「りんご新わい化プロジェクト」を設立。国の補助事業を活用するとともに、JAが独自に苗代の半額を助成するなどして、11年からフェザー苗の配布を始めた。これまでに5万7000本を導入している。