施設の前でテープカットする関係者ら
長野市は長野市若穂保科に、市内で初めての野生獣肉の解体処理施設を完成させた。JAグリーン長野や地元の猟友会員らで構成する若穂ジビエ振興会は施設を活用し、地元で捕獲されたイノシシなどの野生獣を地域の新たな資源と位置付け、本格的な販売を目指す。野生獣の捕獲を強化し、農産物への被害も軽減したい考え。
同振興会は、年間でイノシシ100頭、鹿2頭の販売を計画。(株)農協直販との連携で、ジビエ(野生鳥獣肉)取扱業者への肉の紹介やレストランなどへの直接販売を検討する。また、同地区川田のJA若穂農産加工センターで女性部と連携し、イノシシのジンギスカン、メンチカツ、煮肉の瓶詰めなどの加工品作りも検討している。
ジビエは脂肪が少なく栄養が豊富だが、流通量が少なく、消費者の認知度が低い。今後は地元の業者や料理研究家、シェフなどと連携して、商品開発や料理の研究を通し、食材として活用の幅を広げていく。併せてジビエ振興に取り組む信州ジビエ研究会などと協力し、流通経路の開拓も進める。
同地区の野生鳥獣による被害は、1989年ごろから発生。2004年からは、対策として市の協力を受けて補助用のくくりわなや柵を本格的に設置した。10年には、地区内で220頭のイノシシの捕獲が報告されている。被害の深刻化を受けて長野市は、市内でも最も捕獲数の多い同地区に、地元の住民らの理解を得て施設を建設した。今後、保健所の許可を取得し、運営を始める。
同所で27日に行われた竣工(しゅんこう)式には長野市、JA、猟友会、地元住民らが出席。JA担当者は「ジビエ肉の消費拡大に向けてまずは地元の人に味わってもらい、地域振興を図っていきたい」と話した。