進化し続ける農業機械

昭和40年代から登場した農業機械は、農業者の労働力の軽減や生産性・品質の向上に大きく貢献し、現代の農業に欠かせない存在となっています。
さらに近年では農業機械も個性を感じさせるスタイリッシュなデザインが登場しています。こうした農業機械の進化は、農業者の仕事を助けるだけでなく、農業に触れた事のなかった若い人や女性が新たに農業に親しむきっかけになっています。そうした農業機械の最新の機能や魅力をご紹介します。

大地を耕す万能機械 トラクター トラクターは年間を通じて活躍する万能な農業機械です。トラクターの後部に脱着できる様々な
インプルメントが用意されており、作業目的に応じてこれを付け替えることで、耕耘や肥料散布、
代かきやあぜ塗りを行うなど、あらゆる作業が可能になります。

多彩な作業機=インプルメントが特徴 作業機の付け替えで様々な作業が可能になります。

  • 代かき 土を細かく砕き、種まきや植え付けの準備をする
  • ロールベーラ 刈取った干し草やワラなどの作物を圧縮して梱包する
  • あぜ塗り 田んぼの水漏れを防ぐため水田の周囲に土で壁を作る
  • トレーラー たくさんの荷物を効率よく運ぶことができる

営農指導員の視点

農業は重労働の連続です。農業トラクターは作業機を取り替えるだけで様々な農作業が可能になる、最も汎用性の高い農業機械です。トラクターがなければ農家は仕事になりません。まさにトラクターは農作業の原動力で、農家の負担を大幅に軽減させる良きパートナーなのです。作業機は消耗品なので、壊れたら新しいものに交換していきますが、トラクター自体はメンテナンスを行う事で20年近くは現役で活躍できる頼もしい機械です。トラクターの値段は馬力によって変わり、100万円程度から、大規模な野菜農家で使用される2000万円クラスの大型トラクターもあります。

稲作を支える 田植機 稲作文化の日本が世界に誇る農業機械が田植機です。田植え機は作業負担を削減し、生産性も大きく向上させました。また、田植機とともに栽培方法も日々進化し、従来の移植栽培とは異なる、新しい栽培方法も注目されています。

便利な機能が田植えをサポート 田植機には軽労化や低コストに貢献する便利な機能が備わっています。耕盤の凸凹にも対応できる高精度の植付技術や、作業状況を教えるLEDランプ。肥料・薬剤をムラなく効率的に散布できる機能など、様々な技術で田植えをサポートします。

  • 植付部制御 耕盤の凹凸等で走行部が傾いても、自動的に植付部を水平制御します
  • 溝切作業 稲の根の張りが改善され、米の収穫量や品質の向上を図ります
  • 除草剤散布 除草剤をムラなく均一に散布。過剰散布を抑え、コストや労力を低減できます

営農指導員の視点

  • 直播栽培 直播(じかまき)栽培とは育てた苗を植える、従来の移植栽培ではなく、種子を直接田んぼに播く栽培方法です。育苗作業と田植え作業が不要となり、軽労化できるだけでなく、これらにかかる種苗費や資材費も削減できます。 また、移植作業との併用で、収穫時期をずらし、作業分散化をすることで、経営の拡大や稲作以外の栽培も可能になります。
  • 疎植栽培 疎植栽培は、株間を広げて栽植密度を下げた栽培法です。植える苗は減りますが、採光や風通しが良くなり、丈夫な稲に成長します。大きな穂が実り、倒伏に強くなるので、従来の栽培方法と収穫量はほぼ同等になります。また、病害虫の発生も抑える効果もあります。

伝統的な稲作道具

伝統的な
稲作道具
農業機械が普及する前は、人力や畜力による田植えを行っていましたが、農業者は知恵と工夫で農具に改良を加え、日本の農業を発展させてきました。 かつて、日本の農家で活躍した田植え道具をご紹介します。 (奈良県立民俗博物館収蔵)

  • 馬鍬(まぐわ) 田植えの前に、田に水を入れ、土を砕いてやわらかくします。昔は牛や馬に馬鍬を引かせて田んぼを耕していました。
  • 踏車(ふみぐるま) 田んぼに水を張るために、羽根板を踏んで羽根車を回し、田んぼに水をいれていました。
  • 千歯扱き(せんばこき) たくさんの歯を並べ、穀物を歯と歯の隙間に挟んで引いて脱穀する農具です。

農作物を病気から守る 散布機 人間は農業をはじめると同時に、農作物を守るために様々な工夫をしてきました。そのひとつが農薬です。風邪をひくと、薬を飲むように、植物も病気にならないためには、薬が必要です。農薬を適切に使うことで農業者が大切に育てた農産物を病気や害虫、雑草などから守るだけでなく、収穫や品質を安定させ、商品価値を高めるなど、農業生産に重要な役割を担っています。

広い範囲を効果的に散布する 農薬散布機は農薬の種類や使用目的によって噴霧機や散粉機,ミスト機,煙霧機など様々なタイプがあります。スピードスプレヤーは果樹園などで使われる噴霧機です。強力な送風機によって、後部の噴口から霧状になった農薬を散布し、果樹に付着させることができます。 最近では無人ヘリコプターの農薬散布も導入され、田んぼや傾斜地の多い果樹園、野菜畑など幅広く活躍しています。広範囲に散布できるので作業効率が向上するだけでなく、少人数での作業が可能になり、省力・低コストにも貢献しています。

営農指導員の視点

農薬の歴史は約3000年も前にローマではじまりました。しかし、当時の農薬は科学的な根拠もなく、効果があったかは定かではありません。1700年代に入ると、欧州で防虫菊の粉に効果があることがわかり、商品として広く知られるようになりました。その後、1900年代には農薬が環境や人体に与える影響が重視され、現在に至るまでに技術開発が進められています。
農家では、私たちにおいしい農作物をいつでも食べられるように、安全性が高く、環境への負荷も考慮された農薬を使っています。もし、農薬を使わなければ、一定の収量と品質を維持することが難しくなってしまいます。農作物を病気や害虫から守ってくれる農薬は、現代農業において、必要不可欠な存在なのです。

収穫する コンバイン おいしい農作物をお届けするには、収穫のタイミングが大切です。
収穫機は労力を軽減して効率的に、なおかつ農作物を痛めずに収穫しなければならないため、農作物の種類によって様々な機械があります。

コンバインで「刈り取り」と「脱穀」の同時作業 刈り取った稲を天日干しで乾燥させて脱穀する方法が一般的ですが、大規模農家の場合では、時間も労力も非常に掛かってしまいます。コンバインは穀物の刈取り、脱穀を同時に行うことができるので、大幅な省力化になります。その後脱穀された籾は、乾燥機で即日乾燥されます。

その他の便利な収穫機

  • アシストスーツ 果皮が柔らかい果物は取り扱いが繊細なため、ほとんどの場合、機械で収穫することができません。ぶどうや梨などの棚栽培の収穫は長時間腕を上げての作業ですが、スーツを装着することで腕や肩の負担が軽減されます。
  • 野菜の収穫機 ジャガイモやニンジンといった根菜類は土ごと掘り出してふるいに掛け、キャベツやハクサイなどの葉菜類はバリカンの刃で刈り取って収穫します。他にも、野菜にあわせた様々な収穫機が登場しています。

営農指導員の視点

汎用性のあるコンバインでは、米だけでなく、大豆や菜種、そばも収穫することができます。最近では農業のIT化により、刈取りしながら、また圃場ごとに食味・収量を確認・把握することができるクラウドサービスも登場しています。農業機械が道具としてだけでなく、農作業をデータ管理し、農業機械と連動し、品質・収量の向上とコスト低減をサポートするツールへと進化しています。また、JAグループでは、農家の方が求めているような、高機能と低価格を備えた『JAグループ独自型式』コンバインもメーカー共同で開発しています。

FASHONABLE LIGHT TRUCK 軽トラがオシャレに変身!
農業女子目線の軽トラック
農業人口の半数を占める女性に、もっと活躍してもらえるよう、女性が使いやすい農業機械などの開発が進んでいます。自動車メーカーのダイハツは農林水産省が推進する「農業女子プロジェクト」とコラボレーションして、女性に嬉しい機能や装備を充実させた軽トラックを誕生させました。こうした取り組みが、女性や若い人の農業参加を盛り上げています。

  • 豊富なボディカラーバリエーション(全8色)
  • 紫外線&赤外線カットガラス
  • ミラー付きサンバイザーを装備
  • 農業組合法人ゴトーファーム
    代表理事
    後藤 貴史さん
  • JAグリーン長野
    営農技術員(インタビュアー)
    神戸 秀夫さん

今回、お話を伺ったのは、長野市篠ノ井でゴトーファームを経営する後藤貴史さん。
農業機械が大好きで、「農業機械を買うために、農業をはじめた」というほど。
そんな後藤さんに、農業機械や農家の現在についてお聞きしました。

農業機械は便利ですが、人の手も欠かせません
ゴトーファームでは米や麦を始め、大豆やそば、りんご、もも、ぶどう、洋梨などを育てています。その他、遊休農地の減少を防ぐために、高齢化などを理由に農業が続けられなくなった農家さんの作業受託も行っています。田んぼや畑で使う主な農業機械として、トラクター6台、田植機5台、自脱型コンバイン3台、汎用コンバイン3台を所有していますが、果樹園では防除機や草刈り機も使っています。特にお米の場合は、収穫後の籾擦り機や、良品を選別する色彩選別機、乾燥機も必要になってくるので、農業機械をすべて一から揃えようと思ったら大変です。
また、農作業では、機械だけでなく多くの場面で手作業が必要になります。ゴトーファームでは常時10人程が働いていますが、半分はパートタイムの女性職員です。果樹を育てる工程には花摘みや、カバー掛け、収穫、枝の剪定がありますが、これらは女性たちがすべて手作業で行っています。果樹に関して機械ができることは、草刈りと消毒くらいです。農業機械は便利になっていますが、細かい作業などは人の手を使わなければできません。
農業機械が好きで、農業を始めました
私が本格的に農業を始めた10年程前、一番最初にしたことはトラクターを買ったことです。農業機械が好きで、乗りたい気持ちが強かったので、必要以上に大きなトラクターを買ったのです。普通は、農地が拡大していくと共に必要な機械を揃えていきますが、私の場合は順番が逆でした。その時に購入したトラクターは、今でも現役で活躍していますし、自分でラメ入りのグリーンに塗り替えて楽しんでいます。機械を買うために農業をしていると言ってもおかしくありません。
最近の農業機械はエアコンが効いたりと、快適性が増し、運転や操作も簡単になっているので、女性も機械に乗って作業をしている姿を目にします。稲刈りの時期には、女性がコンバインを運転して、男性が籾を運び、乾燥機に移しています。長芋の収穫では、女性がバックホーを操り、土を掘り返して男性が箱詰めしています。
農業もIT化が進み、新しい技術や便利な機能が出てきていますが、機械だけに頼ることはできません。例えば、土地の良い圃場であれば、自動化された機械でも作業ができますが、圃場の状況は場所によって異なります。実際に農地を走らせ、経験を積み、その圃場の特徴を掴んだうえで機械を操らなければ、性能を発揮することはできません。また、コンピューター制御されている場合は、故障してもどこが悪くなっているのかわからず、整備ができずに困ることもあります。
農家には厳しい現状もあります
農家を始めたいという新規就農者にとって、農業機械を揃えるというのは資金的にハードルが高いと思います。市や県では農業機械購入の助成もあるので、申請するのも良いかもしれません。また、果樹の場合、機械はあまり必要ありませんが、先にも話した通り、手作業が多いので、人員が足りないときは地域の中で集めなければなりません。
この辺りの地域では、親子で農業を継いでいく方が多いですが、それも年々少なくなってきています。もう少し農業へのハードルが下がれば、意欲のある若い人たちもでてくると思います。 「人とのつながり」でみんなが助け合っています
私がこれまで農業を続けられたのは「人とのつながり」があったからです。農業をはじめた10年前は、農家同士のつながりは、自分にあまり関係ないと思っていました。しかし、周囲とのつながりを大切にしていると、困った時には地域の人や、農家仲間、農協などみんなが助けてくれるのです。
今は、地域を越えたつながりもでき、助け合っています。新しい仲間とのつながりは、ビジネスのきっかけにもなっています。
大変なことが多いのも農業ですが、私はやっぱり楽しいから農業をしています。農業を志すのであれば、「農業をしてこうなりたい!」という強い目標が必要です。私の場合は「良い農業機械に乗りたい!」「もっと頑張ればいろいろな農業機械を買える!」という目標を持っていますよ。