4月24日(木)、東御市にある果樹栽培技術の拠点「サンファームとうみ」で、巨峰苗木の植樹祭が行われた。
この植樹は、同市内で昭和31年から培われてきた巨峰栽培の歴史や技術を未来に継承する象徴(シンボルツリー)としようと、東御市が企画した。当日は、市やJA関係をはじめ地元生産者など、約20名が集まった。
東御市は、全国有数のブドウ産地として知られ、なかでも「巨峰」は市を代表する特産品。東御市における巨峰栽培の開始は、昭和31年と全国でも早く、まだ栽培技術が確立されていないなか、地元生産者が試行錯誤を重ねて、産地として確立させてきた歴史がある。生産者が継承してきた高い技術のもと、昼夜の寒暖差が大きく南面傾斜で日当たりの良い地勢といった、果樹栽培に適した豊かな気候風土のもとで育まれた巨峰は、その品質の高さから市場でも高く評価されてきた。
一方で近年は、シャインマスカットなど新たな品種の人気により、消費者の嗜好もかわったことで市場環境が大きく変化。巨峰の栽培面積・生産量は減少を続けている。(同JA東部地区(旧東部町エリア)のブドウ栽培は、栽培者数でみると1989年の約550名から2024年度には約300名に。栽培面積は、1989年の約173ヘクタールから約110ヘクタールに。そのうち有核巨峰の割合は現在およそ1割)
こうした中でも、生産者の高い技術力は巨峰栽培を通じて培われたものであり、ブドウ産業全体の基盤となっているともいえる。そこで市では、巨峰栽培の歴史を単なる“過去”とせず、市民や生産者が“誇り(シビックプライド)”として大切にし続けるべきものと位置づけようと、今回の植樹につながった。
今回定植したのは、「巨峰ナガノ1」の苗木3本。東御市の花岡利夫市長やJA信州うえだの櫻井典夫常務理事、東部ぶどう部会の中川良二部会長らが、苗木に大切に土をかけ定植した。花岡市長は、「先人の努力を継承し、発展させていく。適地適作の地であることをアピールし、みんなでこの地のブドウを育てていきたい」と決意を述べた。
JAの櫻井常務理事は、「巨峰から始まった東御市のブドウ栽培は、地域の先輩方がたいへんな苦労をして築き上げたもの。これからもブドウ栽培が輝きを増していけるよう、しっかり技術を継続し、市や地域生産者とともに産地を盛りあげていきたい」と話した。
苗木は、サンファームとうみで巨峰の「象徴」として長く育てていく。将来的に巨峰への需要が再び高まった際には、苗木の供給源(原木)としての役割も担う予定だ。
※この植樹のきっかけとなったのは、毎年ブドウの収獲時期にあわせて同市やJAが開催する「巨峰の王国まつり」実行委員会で、他の品種が主力になりつつあるなか名称が「巨峰」の王国のままでよいのか、という意見が出たこと。会のなかで検討を進めるうち、巨峰栽培の歴史を掘り下げ産地化までに先人の努力と苦労があり、継承してきた栽培技術が礎となって現在のブドウ産地があると知り、この歴史と技術を後世に残していくべきという機運が生まれた。このまつりは、今年で33回目を迎える一大イベントであり、市内外から多くの来場者を集めている。