JAみなみ信州と同JA果樹部会りんご部会は、高森町の(株)マツザワと協力して栽培の過程で不要な果実として落とす「摘果リンゴ」を集荷している。同JA部会員に集荷を呼びかけ、集まった摘果リンゴを同社が買い取り菓子などに活用し販売する。JAと企業が連携することで本来は廃棄する果実が人気の菓子に生まれ変わり、農家の夏の収入にもつながっている。同JAでは今シーズン7月23日~9月24日まで受け入れ、38軒の農家から40トンの集荷を予定している。
高森町の志水義洲さん(77)は「本来は捨ててしまう果実を受け入れていただき製品に活用してもらえるのはたいへんうれしい。少し手間はかかるが収入になりありがたい」と話し、この日27箱(1ケース10kg)を持ち込んだ。
同JAと(株)マツザワが協力する摘果リンゴの集荷は10年以上前から行っている。比較的扱いやすく味も良い「ふじ」の56mm~72mmのサイズを「中」とし、21年からはこれまでより大きい摘果リンゴも「大」として受け入れている。また今年は「大」の買い取り単価を上げ農家の収入増につながっている。
同社ではサンふじは銘菓「りんご乙女」へ、大はスティックパイへ、飯田市内で収穫した摘果リンゴは市内で醸造するシードルへと活用し原料を使い分け付加価値を高めた商品開発を行っている。2022年にりんご乙女に使用する小麦粉の全量を長野県産に切り替え、原料の70%が長野県産になった。(株)マツザワの森本康雄取締役は「土産(みやげ)は「土から産まれる」と書き、地域の皆さんが生産した大切な産物を利用させていただき製造している。“もったいない”との思いから地域の皆さんと協力し、捨てられる摘果リンゴの活用が実現できた。これからもさらに連帯感を深め、地域の活性化を一緒に実現していきたい」と話した。
同社の「りんご乙女」は国際優秀味覚コンテスト(iTQi、ベルギー)で2009年から16年連続で最高位3つ星を受賞している。定番の箱入りのほかプラスチックトレーなしの規格も開発するなど環境保全や食品ロス削減にも積極的に取り組んでいる。