片桐さんの農事録
[片桐さんの農事録]

みなみ信州発☆羊と暮らすゆきさんの農事録 第63回

ゆきさん農事録

 

こんにちは!
そして、ありがとうございます!!

書きたい事はほぼ書き切ってしまったけれど、なんだか別れがたくて農事録を続けさせてもらったのは、今まで長い間読み続けて下さった、そして、おそらく意識して牛乳も飲んで下さっているであろう皆さんにお礼を言う、この瞬間のためだったのかもしれません。日本だけでなく、世界が揺れている春。皆様いかがお過ごしですか?

 

空前の牛乳消費ブーム

ゆきさん農事録

 

まずは「Jミルク」Webサイトの「牛乳 販売本数の推移(900~1000ml)(週間)」をクリックしてみてください。

牛乳の販売本数の推移グラフが出てくると思います。2/24~3/2にかけての販売本数が、あまりに不自然にぴょこんと飛び出て伸びているのがわかりますよね。私はこれをリアルタイムで、言葉が正しいか微妙ですが「わくわく」しながら追っていました。

コロナウイルスによる新型肺炎感染拡大を受け、政府が全国の小中学校一斉休校を発表した後、私が趣味で持っているTwitterのアカウントで真っ先に見たのは、「学校が休みになると給食がなくなって酪農家が困るから、みんな牛乳飲んで酪農家を助けよう」(要約)と言うような、以前に酪農家の特集を撮ったことがあると言うTV制作に携わる方のツイートでした。
何度か書きましたが、我が家の牛乳は飲用ではありますが、松本にある信州ミルクランドに一度集められ、そこで様々に分配されるため、出荷後はもはや「自分の家の牛乳」という単位で考えたことが無く、学校休校=給食がなくなる=学校牛乳出荷分が余るという状況に、恥ずかしながら私はそこで初めて気付いたのです。

そのツイートを見た翌日には、Yahoo!のトップページにも主に学校牛乳として出荷している酪農家の記事が載っており、同時に、Twitter上では、酪農家やその関係者さん達の「牛乳を飲んで欲しい」というツイートがあふれかえるようになりました。また、ちょうど今我が家にメインで来ている集乳車の運転手さん(ローリーさん)が長野県の集乳配送の責任者さんだそうで、「牛乳が余りそうで悩みすぎて神経性胃炎になった><」とため息をついておられました。
奇しくも1週間ほど前、組合の定期総会で「今年は暖冬だったぶん牛も調子が良くて、乳量も結構出ているからありがたい」と言うような話をしており、「タイミング悪いですよねぇ」なんて世間話を続けたのですが、実は私、そのときあまり心配をしていなかったのです。なぜなら、最初のツイートを見てからの、まさに24時間ほどでTwitter上では空前の牛乳消費ブームが起きていたからです。

私はTwitterでは職業をあかしていないため、関連ツイートをリツイート(拡散)することしかしませんでしたが、最初に見たそのツイートには「いつもは牛乳を飲まないけど、今日は1本買って帰る」「久しぶりにフルーチェ作ってみる」「いつもはブラックだけど、暫く牛乳入れてコーヒー飲む」「うちは元々、水代わりに牛乳飲んでいるけど、子供達学校休みになるからもっと飲みますね」「いつもは朝食べないけど、牛乳でコーンフレーク食べる」という様なコメントが連なり、次第に「牛乳大量消費レシピならこれがオススメだよ!」という内容に変わっていき、その後、料理家や料理好きな方が自慢のレシピを写真付きでツイートされ、それが瞬く間に何万件とリツイートされていきました。

我が家の集乳は隔日です。中1日はさんで来たローリーさんは、今度は「なんでか関東方面でやけに牛乳が売れているみたいで、牛乳が足りなくて朝から電話ばっかりきてノイローゼになりそう」と言いながらやってきました(笑) 私からTwitter上での流れを聞いていた父が事情を説明していたようですが、それが、僅か数日の間の出来事です。

ゆきさん農事録

 

この出来事を見続けた数日間、私は嬉しくて、嬉しくて、職業をあかしていないもどかしさに身もだえしつつ、目に付くツイートに「いいね」の意味のハートマークを押して回ったので、ちょっと不審者だったかもしれませんが(私のアカウントは主に映画や本の感想がメイン)、グラフの結果を見れば一目瞭然ですよね。皆さんが少しだけ意識して牛乳を手にとって下さったことで、牛乳消費が落ち込むこの季節に、逆に夏の消費量に近づく勢いで売れていたのです。
実際問題としては、学校牛乳生産ラインは小型パックが多いため、廃棄分も出てしまってはいますが、飲用消費が伸びた事で、ある意味猶予が生まれ、小型パックを捌く販売ルートがすぐに組まれ、また、運転手や車の手配をし、牛乳の足りないメーカーへと都合をつけることも出来ているようです。

さらに、ローソンさんが3月9日より「マチカフェ」ブランドの「ホットミルク」を半額で販売するなど支援を打ち出して下さった結果、初日の販売量は給食用の200ml換算で11万本相当(1Lでは約22,000本分)だったようで、消費者の方々が本当に意識して牛乳を手にとって下さっている、手にとり続けてくれているのだとわかりました。発表によると、特に酪農家の多い地域での販売量が多かったようです。

絶対に、農事録に書こうと思いました。
皆さんがそれぞれに大変な日常の中で「あ、牛乳買おう」と思って下さったことが、とても嬉しくてありがたくて。ちゃんと結果として表れ、酪農家を助けてくれている事、そしてそれもちゃんと酪農家に伝わっているのだと知って欲しくて、今月はこの文章を打っています。文字ばかりで長くてすみません。
と同時に、長らく風評被害に悩まされたBSE(牛海綿状脳症)や口蹄疫の時に、このTwitterという様なツールがなかった事が悔やまれてなりません。良いことも、悪いことも、瞬く間に情報共有されていくツールですが、おそらく、「直接の声」のひとつだから、こんなにも沢山の皆さんに届き、受け止めた皆さんが協力して下さったんですよね。改めて、ありがとうございます。

・・・私の感動、伝わっていますか?(笑)

 

国産100%の牛乳をいつも通りにお届けしたい

ゆきさん農事録

 

今は牛乳出荷に生産調整の指示は受けていませんが、今後の状況次第では加工用牛乳に回す必要も出てくるとは言われています。飲用と加工用では乳価に差があるため、普段飲用価格で出荷している農家には経営を直撃する大きな減収につながります。とは言え、世の中の状況が状況なので、多少覚悟も決めています。

上の新聞記事、文字が小さいかもしれませんが、万が一農家や関連施設で感染者が出た場合について各所で想定し、事前に準備・対処するようにという様な事が書かれています。酪農に限らず家族経営の多い農業ではなかなか各個で助け合うことは難しいのが実情で、感染予防をまず第一に考えたい所ですが、それでも、この記事の翌日、ローリーさんが「万が一の時に」と我が家を含むルートを回ったことのない方を連れて集乳に来ました。備えて下さっているのだなと思うと、仕事だとはわかりつつも、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

今、不安ばかりが先行して、大変な時ですよね。私たちの業界も、物流を途絶えさせないように努力していきます。皆さんにも、今日も明日も、これから先も、国産100%の牛乳を、いつも通りの日常の一部として手にとり続けて貰えたら嬉しいな、と思います。

 

牛乳を使って「おうちdeデザート」

ゆきさん農事録

 

さて、そんなワケで、Twitter上では今かつてない程「牛乳を使ったレシピ」があふれています^^* その筆頭は「蘇(そ)」だと思いますが、その話題はまた次の機会に(笑) どれもこれも美味しそうで、基本牛乳は飲むだけだった私も、作ってみて写真紹介が出来たらいいなと思い、確定申告関連が終わったら作ろう! とメモしたりしています。
個人のものなのでやはりここで紹介することは出来ませんが、「牛乳消費レシピ」というようなキーワードで沢山検索に引っかかってくると思うので、ぜひ皆さんも作って食べてみて下さいね!^~^

ちなみに、忙しくてちょっと自作する時間は><;という方にオススメなのは、有名どころのフルーチェや以前にも紹介した「かんてんぱぱ(伊那食品工業株式会社)」の牛乳寒天の素など、牛乳を使って作る商品です。殆どのものが専用粉末を牛乳と熱湯(80℃以上)で混ぜて冷やすだけなので、とにかく簡単!^▽^ 学校がお休みで退屈しているお子さんと一緒に作ることも出来ますし、近くのお店に売りがなくても、かんてんぱぱのサイトから通販利用出来るし、レシピも載っているので「おうちdeデザート」、楽しんでみて下さいね♪

 

元気に春を迎えましょう

ゆきさん農事録

ゆずちゃんとうりちゃん

そして、再びエリザベスカラーのうりちゃんです(笑)
しっぽの付け根にしこりが見つかって、過去に悪性リンパ腫由来の腸閉塞だかで死にかけているので、状況的には全く笑い事では無かったのですが、手術で無事除去でき、病理検査でも悪性のものではないとわかったので、一安心です^^*
この農事録が公開される頃には抜糸予定。うりちゃん的には一足早く春が来そうですΦwΦ ・・・が、まだ寒い季節、電気カーペットの方がよかろうと新調したら、ゆずちゃんが気に入ってしまって、ハーネスで繋がれているわけでもないのに殆どの時間、うりちゃんとここで過ごしてくれているようです(笑) 抜糸しても暫くは電源落とせないかな^^

ゆきさん農事録

スカーフとほるこさん

私はと言えば、先日久しぶりにゆっくり買い物に出掛け、綺麗な、元気の出る色のスカーフを買いました^^* 今年の春は、このスカーフと一緒に迎えようと思います。

では、また♪

ゆきさん農事録

 

この記事を書いた人

片桐由貴さん

伊那谷をまっすぐ南に向かって流れる天竜川流域の牛舎で、仕事と趣味、どちらも楽しむという片桐由貴さん。大学卒業後「やっぱり牛が好き!」と、家族の営む酪農に就農して12年。80頭ほどの牛たちと、ペットの羊2匹、猫5匹と過ごす日々を綴ります。

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