花井さんの農事録
[花井さんの農事録]

須坂の4つの季節を巡る農事録 



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ところどころが
もえぎ色だった
山の緑は、
すっかり深い色に
変わりました。

雨に洗われた後は
その色がいっそう映え、
しばし見とれてしまいます。

こんなにも早い梅雨入りは
予想もしませんでしたが、
いよいよ果樹農家にとって
一番いそがしい時期の
はじまりです。



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摘果で落としたプルーンの実

 

樹の花が咲き誇ってから早1ヶ月。近頃は明けても暮れても『摘果』の作業です。摘果とは、果実が小さいうちに間引くことですが、この作業には二段階あり、一度目の摘果を『予備摘果』、二度目を『本摘果』『仕上げ摘果』などと呼びます。

 

現在行っている予備摘果は、実のなり過ぎによる樹勢の衰えを避けるための、どちらかというと数を調整する作業になります。実の大きさや形で選別しつつ、将来残すべき位置にも気を配りながら落として行くので手間がかかり、今年のようにたくさん実った年は相当の時間を費やします。周辺の農家の多くは畑が点在しているため、数日単位で畑から畑へ移動するという、まるでジプシーのような仕事ぶりです。


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も、プルーン、りんご。その品種によりそれぞれ熟期(収穫期)が異なりますが、摘果の作業はどの果樹もほぼ同じ時期に集中します。なんとしても「適期」といわれる期限内に終えようと果樹農家は作業に追われ、夢の中でも摘果をするくらいに(笑)追いつめられるのがこの時期です。

雨降りの中での作業は少々切なくなることもありますが、晴天のすがすがしさや風の心地よさ、または高く響く鳥の声。ふと集中力が途切れた際に感じるそんな些細なことが、せわしなく作業に追われる暮らしの中で際立って美しく、清らかなものとして心を動かされる時があります。


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れはなぜなんだろう、と作業に戻りながら考えてみても、結局わかりません。ただ、無心になって一本一本の樹と一つ一つの果実を追って行くことで、日頃の理屈から離れ感覚が自由になるのを感じます。そのことが心持ちに変化を与えているのでしょうか。

 

自然環境下で人間以外の生物を相手に仕事をする時、たいていのことは思い通りに行かないものです。それでも、なぜこのような仕事をしているかというと、もちろん喜びもたくさんありますが、それ以上に、「思い通りに行かない、ということ」を教えてくれるからなのかもしれません。作為から解放され新たな価値観や思考が生まれるように、そんな謙虚とも言える働き方ができたらいいと思っています。

 

ばらく余裕のない暮らしが続きますが、夜には疲労感を最高の肴として少しのお酒を楽しみつつ、リラックスしたいと願う今日この頃です。

 

それでは、今回はこのへんで。

 


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この記事を書いた人

花井かおりさん

花井かおりさんは長野県北部の須坂市で、ご主人とその両親との4人で農園を営みます。就農したのは6年前。もも、プルーン、りんご、ぶどう、そしてアスパラガスといった果樹や野菜の多品目栽培です。「地に足をつけた暮らし」をいとおしみ、母屋のそばに建つ小さな家とともに「生活の延長線上に仕事がある生き方」を楽しみつつ、農とそれにかかわる自己を見つめるかおりさん。彼女の4つの季節を巡る農事録です。

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