大樹の農事録
[大樹の農事録]

ドローンでスマート農業のあとは...、人の手で田んぼアートづくり

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

こんにちは。
5月末にこたつを片付けた我が家ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

田植え後の水鏡に映る北アルプス

 

こちらはすっかり田植えが終わり、西を望めば水面にもアルプスを見ることができます。

こたつは片付けたのに、ストーブはまだ片付けられません。それもそのはず、一日の寒暖差が20℃以上あるので体調管理も大変なのです。

いくら昼夜の寒暖差が美味しい作物を作るといっても、開花後の遅霜は勘弁願いたいものです。
安曇野市でも果樹の凍霜害が多く出ています。
我が家では収穫を目前に控えている麦が少し被害に遭いました。今年の作物の品質が心配です。

 

安曇野も衣替え

さて、5月といえば一大イベントである田植えの季節。今年は高温障害で種の蒔き直しをしましたが、その後苗が予想以上に復活してくれたため、田植えは何とか予定期間内に終えることができました。
蒔き直して使わなかった苗は無駄になりますが、これも授業料だと思って再発防止に努めます。

田植えの準備

 

田んぼの準備も好天に恵まれ気持ちよくこなすことができました。
安曇野の大自然の中では大きなトラクターもミニチュアの様に見えます。

田植え

 

田植え機は問題なく動いてくれました。自動運転の最新の田植え機を見ると欲しくなりますが、しばらくはこの機械を大事に使っていきたいと思います。

田植え後の水鏡

 

大雨の翌日、田植えが終わった水田には大空が写し取られていました。
田植えが終わると安曇野の風景は一変します。田にしっかり水を張り、来たる夏へと衣替えをするのです。

ステイホームの影響もあることでしょう。早朝には普段見ない顔の人が散歩やランニングをしている風景を目にします。これを機会に少しでも多くの人に、安曇野の朝の素晴らしさを知ってもらえたら嬉しいです。

 

スマート農業

4月の農事録で、今年導入したマシンを入れるための物置リフォームの話をしました。
最後の一部屋に入っていた機械をご紹介しましょう。

農業用ドローン

 

それが写真の右側の台の上に乗っているマシン。

農業用ドローン

 

そう! スマート農業の立役者「農業用ドローン」でございます。
今農業用ドローンは各社入り乱れてのシェア争奪戦時代といっても過言ではありません。
私も購入に当たっては数社実演を見て検討し、この機体に決めました。ドローンの進化のスピードはすさまじく、数年でこの機体も型遅れになっていることでしょう。

農業用ドローン

 

初飛行は田植え後の除草剤散布です。
小さい田んぼではあまり効果を発揮しませんが、大きな田んぼではかなりの省力効果があります。今までは動力散布機という機械を背負って田んぼに入って撒いていたのですが、ドローンではコースさえ覚えさせればほぼ手放しでの散布が可能です。

農業用ドローン

 

飛行物なので、民家周りや幹線道路沿いなどは安全のため飛ばせない等、使用には多少制限がありますが、今の手ごたえとしては導入して良かったと思います。
大きな欠点はバッテリー容量でしょうか。バッテリー1つで飛行可能な時間は10分弱。
圃場が整っていれば1つのバッテリーで1haの面積がこなせるという設計ですが、圃場移動があるとそうもいきません。せいぜい7,000㎡(7反)が限界といった感じでした。

なんにせよ、こういうハイテクマシンは操縦していてワクワクします。
向こう岸にいる補助者(妻)とのインカム(通話機器)でのやり取りも「新しい農業の形」という気がして新鮮です。
除草剤の他には、稲や大豆の病害虫防除にも使えるので今後も有効活用していきたいです。

 

信州安曇野田んぼアート

田植えといえば、今年は安曇野市で田んぼアートを開催します。
私は田んぼアート制作部会の一員として、主に測量したり苗を起こしたり田植えをしたりといった実務的な役割を担う仕事をしています。
田んぼアートはその名の通り、田んぼをキャンバスに見立て、稲の色の違いを利用して田んぼに絵を描くという壮大なアートです。

育苗

 

私の育苗担当は「濃紫」と「黄大黒」という2品種です。万が一にも普通の米と混ざることが無いよう、全ての種まきが終わった後に、機械を使わずハウス外で手作業で行いました。
所定の量を育苗箱に均一にまくというのは想像以上に難しく、家族総出での作業になりました。
手探りでの育苗でしたが綺麗に発芽してくれて一安心。

濃紫

 

これが「濃紫」。稲全体が紫色になります。私自身、こんな苗を見たのは人生初めてです。

黄大黒

 

これが「黄大黒」。黄色が強く出る品種らしいです。丈は短い感じですが、見た目は普通のコシヒカリとあまり大差ない様子。今後の成長に注目です。

圃場準備はというと、6月1日から測量作業が始まり私も初日に参加してきました。

田んぼアートの圃場準備

 

晴天に恵まれ田んぼアート日和。でも日中は日差しと照り返しのダブルパンチで相当きつかったです。

まずは測量会社の指示の下、約4300点あるポイントを測りだし、杭を打っていきます。

田んぼアートの圃場準備

 

トランシット(測量器械)でポイントを割り出し、、、

田んぼアートの圃場準備

 

杭を指して順番にテープで結んでいくと、、、

田んぼアートの圃場準備

 

このように文字の形ができます!! 縁取りの中には何色の苗を植えるか分かるように目印の旗を刺していきます。まずは塗り絵の縁取りを描く作業ということですね!
すごいですねー! 何が凄いって、この絵は真上から見ても全くまともな絵には見えないというところです。
高さ6.6mの展望台に立った時に最も綺麗に見えるように設計されているので、実際の現場では今どの部分をやっているのか全く分からないわけですが、見るべき方向から見ると正しく見えるから不思議。
展望台に上がることで初めて北アルプスを背景にした壮大なアートが姿を現すのです。
これは大変だけど! 本当に大変だけど!! 楽しみでしかない!!!

そんなわけで6月も全力で走ります! こうご期待!!

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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