大樹の農事録
[大樹の農事録]

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第20回

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

皆様こんにちは。ひろきです。
雪は降れどもあまり積もらず、程よく冬を感じられている安曇野です。
このまま大雪が無ければ楽なんですがね。そんなわけにはいかないんだよなー。4月に入るまでは油断禁物。
備えだけはしっかりしておきます!

安田さん農事録

 

朝の散歩では澄んだ空気が顔に冷たく刺さります。白から徐々に濃い青に変わっていく空色は冬ならではですね。

安田さん農事録

 

雪はサラッサラのパウダースノー。雪玉を作ろうにも絶対に固まりません。
こういう雪は上を歩くと「鳴く」んです! ギュッギュッギュ♪ っと。
「鳴き砂」ならぬ「鳴き雪」ですね。

安田さん農事録

 

雪が大好きなコマさんは雪の上で寝転がり、体いっぱいで雪を満喫しています。-10℃でも寒くないのでしょうか?

 

行事が無いからこそ

1月は例年であれば消防団の出初式や新年会、各種セミナー、交流会などイベントが多く開催されていますが、今年はご存じの通りほとんどが中止に。
それでも無病息災を願う三九郎(さんくろう)だけは小規模で開催することとなりました。実は三九郎って正月飾りを片付けるという役割も担っているんですよね。三九郎を中止にした地区は正月飾りのやり場に困っているようでした。
※無病息災を願う正月の伝統行事。長野県の中部では「三九郎」と呼び、それ以外の地域では「どんど焼き」と呼ぶことが多い。

安田さん農事録

 

この1年を通して感じたことですが、コロナを理由に関係のないことまで中止にしているものが目につきました。
何でもかんでも中止が続くと、次の役員に引継ぎが上手くできなかったり、「これを機に行事を減らそう」という流れが増えたりする気がします。
区の行事がほとんど無かった昨年、区長の「こんな中だから時間を割いて検討できることもある。」「今まで嫌煙されていた議案や、地区防災に関しても実態に即した計画に見直していきたい。」との言葉に感動しました。
すごく前向き! そして実際、公民館が一時避難所になった際の具体的な備品の配置図や収容可能人数などを計画し、防災計画をより実効性のあるものに改善していました。
「地震は 起きる前に すでに勝負はついている」という言葉をどこかで見ましたが、本当にその通りだと思います。
「中止だからやらない」ではなく、「中止だからできること」という前向きな姿勢を私も持っていきたいと思いました。

 

冬の創作活動

農閑期の冬は趣味の時間です。事業承継して初年の決算書入力も終わり、少し時間が取れたので、昨年作れなかった藁細工の宝船を作ることにしました。

安田さん農事録

 

宝船は元々結婚式のウェルカムボード制作のために覚えたのですが、欲しいという人が何人かいたので、例年お世話になった人へのお礼として少し作っては贈っています。
今年は2艘作りました。今回は簡単に制作の様子を紹介したいと思います。

まずは下準備。藁をすぐって「はかま」と呼ばれる外皮を取り除きます。綺麗になった藁を水に濡らし木づちでたたいて柔らかくします。これで藁の準備が完了です。

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次に俵作りです。
上の写真のような手順で俵の形に成形していきます。同じ大きさで作るのが難しいんです。
藁を折るときは、家内安全、商売繁盛、無病息災、交通安全・・・と願いを込めながら少しずつ折り折り折り折り。これでもかと願いを込めます!

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そして寸法を合わせ、余分な藁を「押し切り鎌」でザクリと切断すると俵が1つ完成です。1艘の船に12個の俵を使うので、今回は倍の24個も作らなければなりません。俵の制作だけで丸1日かかります。

安田さん農事録

 

俵の断面は中々芸術的です。
3段積みの俵を1セットとして船の前後に配置します。

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次に帆の制作です。針金を軸に藁を重ねては巻き付けていきます。最後に形を整え下側を固定して、余分な部分を縄状にします。
この帆の制作が一番難しく、いまだに納得できる仕上がりになりません。

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船を組み立てる前に、台座の作成です。今回はホワイトウッドを使います。
そのまま使ってもいいのですが、見た目を良くするためにバーナーで表面を軽くあぶります。こうすることで木目が浮き出て深みを出すことができます。
本当は栗やケヤキといった重厚感のある木材の方が見栄えがいいのですが、このようにホワイトウッドでも少し手を加えるだけでカッコいい台座を作ることができます。

安田さん農事録

 

さて、いよいよ組み立てです。
船の土台は写真のように三つ編みにした藁を3つまとめて作ります。それを先ほどの台座に固定し、制作した帆の縄状の部分を下面の三つ編みの間に通して固定します。

安田さん農事録

 

船の先端にはたっぷりと稲穂を括り付け、縄で固定します。稲穂は多いほうが見栄えがいいですね。

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次に俵を配置して水引で飾り付けをします。水引は鉛筆にクルクルと巻き付けることで簡単に飾りを作ることができます。

最後に、船の形を整えて飾り付けをするとーーー・・・

安田さん農事録

 

安田さん農事録

 

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じゃじゃーん♪
藁細工「宝船」の完成でございます!

七福神が乗ってくる宝船を模して、「商売繁盛」、「子孫繁栄」、「大願成就」、「健康長寿」、「無病息災」・・・を願い、そこに「五穀豊穣」や富を象徴する俵をどっしりと乗せています。
船首の稲穂には多収で倒伏に強い長野県オリジナルの品種「風さやか」を使用し、長野県らしさを表すとともに、「実りの多い」、「倒れない」といった縁起も担ぎました。
飾り付けに慶事・吉祥のシンボルである松竹梅を使用し、日本らしく桜もあしらっております。
そう! ありとあらゆる縁起を担ぎまくっているめでたい船なのです!
信じるか信じないかはあなた次第です!!

2艘とも無事に贈り届け、双方ともとても喜んでくれました。
1艘作るのに準備時間も入れると2日程かかってしまいましたが、それ以上に喜んでくれたのでこちらとしても作った甲斐があります。
まだまだ改善の余地はあるので、毎年少しずつレベルアップをしていきたいです。

作り方は、地域の藁細工名人のおじいちゃんに教えてもらったものを、自分なりにアレンジしています。
ネットで見ると色んな宝船の形がありますが、私は地元に伝わるこの形がシンプルに船っぽくて好きです。あまりごちゃごちゃさせずシンプルに魅せるのが粋でしょう。
趣味で始めた藁細工、これも地域文化の継承につながるのでしょうか。藁細工名人のおじいちゃんももう高齢です。地元農家の一員として、農地だけでなく藁細工のような伝統技術もしっかり引き継いでいこうと思いました。
次はもう少し藁を沢山取っておいて3艘くらい作れればいいな。

そんなわけで1月があっという間に過ぎてしまいました。
2月くらいまではゆっくりしたいですね。あと少し冬を楽しみたいと思います。
それではまた次回お会いしましょう。

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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