大樹の農事録
[大樹の農事録]

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第18回

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

安田さん農事録

 

みなさんこんにちは。
今年の秋は例年になく長い間紅葉が楽しめたように思います。
農作業はまだまだあるので、ドライブでゆっくり紅葉狩り、、、とはいきませんが、日々の生活の中で鮮やかな自然の色彩が目を楽しませてくれました。

安田さん農事録

 

庭のもみじも真っ赤っか。やっぱり秋はいいですねぇ。

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朝は霜がおり、雪もそこまで来ています。皆様風邪などひかないように気を付けて下さい。

 

麦蒔きは予定変更の連続

さて農作業の方はと言いますと、11月に入っても麦蒔きが終わりませんでした。
本来であれば大麦の播種適期は10月中旬から下旬です。しかし田んぼが中々乾かないので麦蒔きが遅れてしまいました。
結局11月まで乾かなかった圃場は、他の田んぼと取り換えて大幅な計画変更を余儀なくされてしまいました。まぁ11月頭までに蒔けただけ良しとするしかありません。全て順調に行く年って中々無いもんですね。

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水田が乾かないので黒豆を刈り取った後の圃場を耕起して、もう一度麦を蒔くことに。本当は麦も大豆も連作は避けたいのですが、2年なら大きな影響は出ないので今年は連作障害よりも播種時期が遅れるリスクを回避することを優先しました。

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麦を蒔いたら土が湿っているうちに除草剤を撒きます。この除草剤は草を枯らすものではなく、これから生えてくる草を抑える働きをします。土が湿っている方が、処理層が上手くできて除草効果が向上します。
水田の後ならそもそも畑地の雑草が少ないので、この除草剤を使う必要がありません。その後収穫まで農薬を使わなくてもいいので、基本的に水田後ならば農薬を一切使わなくても品質のいい麦を作ることができます。
そういった意味でも今年の麦蒔きはコストが多くかかってしまいました。

 

手をかけただけの成果

そんな感じで麦蒔きは大変でしたが、11月は晴天に恵まれて大豆の収穫作業は順調に進めることが出来ました。
開花前に生長点を刈り取る「摘芯」の効果もしっかり現れて、収量も期待できそうです。
下の写真の左側が摘芯した方です。丈が短いのに鞘が沢山ついているのが分か、、、りにくいですね。背景を変えれば良かった。

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摘芯区は一本の木に30~40程の鞘がついていました。摘芯をしていない対象区はというと鞘の数が20~30といったところでしょうか。1本でこれだけの差が出るので畑全体で換算したらかなりの量になります。
更に「丈が短い」というのも大きな利点。丈が伸びすぎると倒伏する危険性があり、倒伏してしまった木には豆は殆どつきません。更に刈り取りの際に地面すれすれで刈り取らなくてはならず、ごみを入れてしまうと汚粒の原因にもなります。
摘芯作業は非常に大変で、ここら辺では摘芯をするのは我が家しかいませんが、やるだけの効果はきちんと出る(収入に反映される)ので、草刈りと違って遣り甲斐のある管理作業と言えますね。

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豆自体の品質も良いですね。美味しそうです( *´艸`)

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豆刈りは茎がしっかり乾く10時頃~暗くなる16時頃までしか出来ないので、少しでも長く刈るためにお昼は田んぼで食べる場合もあります。土日仕事の場合には子供達も一緒に外でピクニック気分♪
外で食べるカップラーメンって何で美味しいのでしょう。

 

外仕事も終わり

そんなわけで大豆の刈り取りも順調に終わり、刈り後を秋起こしすれば今年の田んぼ仕事は終わりです。
秋起こしは有機物の分解を促進し、来春水田にした際に水中で有機物が分解されることで発生するガス湧きや、ゴミの浮き上がりを低減させるために行います。

安田さん農事録

 

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秋起こしをしているとカラスの大群がミミズやカエル等の餌を求めてトラクターの後ろをついて回ります。
話題の漫画『鬼滅の刃』に出てくる「鎹鴉(かすがいがらす)」が思い出されますね。
「次ハァァ、北ヘイケェェー! 北へイケェェー!!」と急かされているようで落ち着きません。
カラスに追い回されながらも11月中に秋起こしを終える事ができました。これで今年は田んぼ仕事も一段落です。

 

今年唯一のイベント出店

11月は例年であれば、そば祭りや収穫祭イベントが数日入って来るのですが、今年はJAあづみ主催のイベントが1つだけでした。
私が加入している安曇野市の農業後継者グループの「安曇野.come(あずみのどっとこめ)」で長野県のオリジナル品種のお米「風さやか」をPRしてきました。
「風さやか」は平成25(2013)年に品種登録されましたが、名前が付く前からグループで試験栽培を行い、適した栽培方法を模索してきました。

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食味はコシヒカリに似て甘く、爽やかで後味がさっぱりとしたお米で、澄んだ風を連想させます。また、冷めても食味や粘りが落ちにくいということがデータからも証明されており、お弁当やおにぎりには持ってこいのお米と言えるでしょう。
コシヒカリに比べて粒が丸くぷっくりしており、カレーや牛丼のような汁物をかけてもお米がべたつかず美味しく食べることが出来ます。
安曇野市では学校給食で提供されていたり、地元の酒蔵でお酒にされたり、「風さやか」を使ったお煎餅ができたりと地域に根付いて広がりを見せています。

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多収で良食味、茎が太く倒伏に強いお米「風さやか」。
たわわに実った穂を支え、台風が来ても絶対に倒れず踏ん張る姿は、信州の力強さを体現しているかのようです。
皆さんも是非「風さやか」の文字を見つけたら手に取って食べてみて下さい。
その時に長野県の景色を思い浮かべ、爽やかな風を感じていただけたら幸いです。

 

誰かを照らす小さな光に

誰もが予想できなかった2020年。厳しい年でした。
来年はどうなる、どうする。なんてことを考えながら日が沈む山の稜線を眺めていました。

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「明けない夜は無い」という言葉が思い浮かび、ふと振り返ってみると、ちょうど満月が東山から顔を出してくるところでした。

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こんな時代だからでしょうか、暗い夜を照らす月明かりが妙に優しく感じました。
夜だって光はある。ささやかだけど暗闇で誰かの足元を照らすくらいの光になれたらいいなぁと、そんなことを考えながら2021年に想いを馳せるのでした。

まだ一カ月ありますが、希望をもって来年に備えましょう。
今年も一年お付き合いいただきありがとうございました。

それでは皆様、良いお年を!!!

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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