大樹の農事録
[大樹の農事録]

大樹の、安曇野うまい米づくり農事録 第14回

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

こんにちは!
とうとう梅雨明け?
お願いだから明けてくれ!

安田さん農事録

 

今年の梅雨はとにかく長い(-"-)
長野県でも大雨による災害が数多く発生しました。安曇野市では大きな災害はありませんでしたが、小規模な土砂崩落や床下浸水などが発生し、私も消防団として出動しました。

この長雨は今の日本を表しているようで嫌になります。これからの時期は稲にとって一番お日様の光が必要になってくる大切な時期なので早く晴れて欲しいです。

安田さん農事録

 

葉っぱの上で休んでいるアマガエルたち。一枚につき一匹でソーシャルディスタンスを保っています。

 

大豆がピンチ

先月心配した通り、6月に播いた大豆がかなり湿害を受けています。
下の写真は排水の良い圃場で湿害を受けなかった大豆。日照不足でも比較的順調に生育をしています。

安田さん農事録

 

葉も大きく茂り畝間の土が見えなくなるくらいになりました。

しかし、播種する時に土がぐちゃぐちゃで、そのあとも雨が降って水が中々引かなかった圃場はこんな感じ↓

安田さん農事録

 

予想はしていましたがやはり湿害の影響を受けてしまいました。畝たてをして排水も切っているのにこのありさま。湿害とは水分が過剰にあることで発生する害のことで、酸素供給不足や病気の発生等様々です。種の時に菌に侵されてしまうと発芽することが出来ませんし、発芽後に水に浸かっていると酸素不足で生育が阻害され葉も黄色くなってしまいます。
こうなると圃場が乾いてもなかなか復活してくれません。でも今年は播けただけまだ良い方。
我が家は大麦の後に大豆を播きますが、大麦より遅く刈り取る小麦後の大豆の人たちは長雨にしっかり重なってしまい、播くのを断念している圃場も数多くあります。
自然相手の仕事だからしょうがないとはいえ、近年の天候不順には毎年悩まされっぱなしです。

 

Point of No Return

安田さん農事録

 

なーつくさがーーー、なーがーれてーくーーー♪
いーたーずーらにー、ちーぎーられー、すてーらーれてぇー〽

ということで、今年も草刈の季節の到来です。私が一番嫌いな農作業が畦草刈りです。何故なら大変でコストも時間もかかるのに収入にならないから。

安田さん農事録

 

一日中ラジオと曲を聴きまくって草を刈り倒す毎日。だーれもいない田んぼにぽつんと一人。歌いたくもなります。
田んぼの中、エンジン全開で行う作業なのでかなり大きな声を出しても誰にも聞こえない(はず)。夜飲みに行けないストレスを大声で発散しています(笑)
ランダムで夏曲を聴いていた時にハマったのが「chemistry」の「Point of No Return」。
水路際の草を刈っているときのBGMにドハマり!世代ですしね。
時折流れる夏草を見る度に感情移入をしては口ずさんでいました。でも流れた草は水の掛け口にすぐ詰まってしまうので基本水路に草を落とさないように気を付けて。

例年なら炎天下の中での作業ですが、今年は曇りの日が多かったので身体的には凄く楽に草刈を進めることが出来ました。
こんな涼しい中で出来た草刈は久々です。

安田さん農事録

 

じゃれーあーってー、いーるーよにー、かーらーんでーいえーいーへぇ~♪
草が絡まっても余裕の対処。
何事も楽しく仕事をするって大事!

 

田んぼは満開のお花畑

田んぼはというと、早生品種の「モチヒカリ」や「ひとごこち」が一斉に出穂して花を咲かせています。
一面のお花畑といえ、イネ科の花はどれも地味なので、綺麗だなーとは思いませんが、一つ一つを観察するとピロピロしていて可愛いです。

安田さん農事録

 

コシヒカリはこれから出穂。茎の中に穂の赤ちゃんを隠しています。ここからは根や葉で作られた養分を茎ではなく、穂を充実させるために穂に送ります。ここからが一番太陽の光を必要とするタイミング。日照不足が心配です。
稲の葉が濡れている時間が長く気温が高い日が続くと稲は病気にかかりやすくなります。今年は特にその傾向が強いので、しっかりと観察し防除に当たらないといけません。

安田さん農事録

 

田んぼにはオタマジャクシが大量発生中。
今年は田んぼが乾くことがなかったのでオタマジャクシが大量に育っています。カエルが多いせいか今年は蛇も良くみかけます。

稲の下葉も後半まで元気でいてくれました。稲の葉は下の葉から上の葉まで役割が違います。その中でも下の葉は根の成長において非常に重要な役割を担っています。稲が穂作りに入ると根が傷みやすくなるので、この時期まで根を健全に保つのは良いお米を育てるためにすごく大事なこと。
この先の日照量が確保できれば今年も美味しい新米が採れそうです(^^♪

 

キノコと鳩に心のゆとり

安田さん農事録

 

長梅雨のせいでしょうか。今年は犬の散歩中、見たこともないキノコがそこら中に生えています。小さく群生しているタイプから超巨大なやつまで様々。キノコには詳しくないので採って食べようとは思いませんが、中には美味しいやつもあるのかな。
長雨で苦労している分、秋の松茸とか雑キノコが豊作であれば嬉しいなぁ。

安田さん農事録

 

そんなことを思っていると、嫁さんの「変な鳩がいる」との声。
家の中に入ると砂場の方の窓ガラスを「コンコン」と叩く音。
窓の向こうには一羽の鳩。
こちらが見えているのか知りませんが目の前に行っても全く逃げようとしません。木の椅子に上がったり下りたり。そして上がるたびにこちらを見ては窓をつつきます。
面白い機会なのでここぞとばかりにまじまじとバードウォッチング。「目が赤いんだんぁ。」「羽の形がみんな違う。」「足はめっちゃ汚いな。」などと発見の連続。
数日の間この場所で窓をつついていました。

何てことありませんが、こういう散歩中の変化や意外な訪問客が心にゆとりをくれます。

スマホばっかり見ていると、目に飛び込むのは新型コロナウィルスのことばかり。国の対策や不平不満、誰かに向けた誹謗中傷などを見ると無駄に心を削られてしまいます。最新の情報を知りたい気持ちも分かりますが、ここは一つ深呼吸。

スマホを閉じることで見えるものもあると思います。

世間の噂に振り回されず、心に余裕をもって、人には優しくありたいものです。
それではまた次回。

この記事を書いた人

安田大樹さん

北アルプスをのぞむ安曇野市は、1等米比率日本トップクラスの長野県を支える米どころ。25歳でお米農家を継いだ安田大樹さんは、おいしいお米を作り続けることが「ふるさと安曇野の景観を守り、地域を楽しくしていくことにつながる」と考えました。

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