中川さんの農事録
[中川さんの農事録]

おいしいブドウができるまでの農事録第11回

連載※長野県松本市の東部高原で各種のブドウを生産する果実農家の中川 敦さん(47歳)が、月々の農事を綴ります。

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んにちは。

これは11月8日の巨峰園です。

葉っぱがほとんど落ちかけました。

地面は草刈りをやって堆肥と元肥をやって耕うん機で土をおこした状態です。

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11月に入って、朝夕はずいぶん涼しくなってきましたが、私は朝のこの凛(りん)とした空気がとても好きです。

10月16日に最後の巨峰を収穫して、すべてのぶどうの収穫を終えました。

ヤレヤレです。

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いろいろな人から、「今年の出来はどうだった??」と聞かれるのですが、「とっても良しです!」と答えています。

脱サラ新規就農でぶどうをつくりはじめて4年目になるのですが、栽培面では一番手ごたえがあった年でした。

 1年目は、何がわからないのかわからない状態。

 2年目は、「わからないことは何か?」がわかった状態。

 3年目は、ぶどう作りとはなるほどこういうものか、
      というのが少しわかった状態。


 4年目の今年は、

   去年までの失敗や反省がかなり生かされた状態

とでも言いましょうか。

大きくは地球温暖化の影響で、9月に入ってからの夜温がなかなか下がらないため、ぶどうの着色に必要な昼夜の気温の寒暖差がなくなってきつつあるというさまざまな気象条件の変化で、「黒いはずのぶどうがなかなか黒くならない」「赤いはずのぶどうがなかなか赤くならない」というのが近年のぶどうの特徴です。

わたしは地元のぶどう集荷場でぶどうの検査の仕事もやっているのですが、赤い巨峰、赤いピオーネの何と多いこと! わたしも去年は赤い巨峰をずいぶん出荷しました(笑)。

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それでも地元で一流といわれている生産者の方は、たとえどんなに気象条件が悪い年でも本当にいいぶどうをつくることをぶどう集荷場で目の当たりにしてきたので、自分も一年でも早くこういうレベルに達したいと去年は強く思ったものでしたが、今年は巨峰についていえば、そんな思いがある程度かなえられた年でもありました。

れからデラウェア。

今年の出来は「最良」でした。

わたしにはデラウェア園が3つあるのですが、実はいろいろな実験をやっていました。

標高差をつけた3つのデラウェア園なので、春からのぶどうの生育には数日のズレがあって、それがちょうど良い作業効率をもたらしていました。それでも仕事が重なってしまってどうにも身動きがとれないという期間がいくらかありました。

そこでJAの指導方針では、これは絶対に欠かせないという作業をいくらか省略してみたりとかいろいろやっていました。なるほどこれをこうやったらぶどうはこうなるんだ、これをやらなかったらぶどうはこうなるんだ、というようなことがいろいろわかってきました。

3つのデラウェア園、頭の中ではもう栽培プランができあがっています。

来年が楽しみです。

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れは第1デラウェア園。

ここはわたしが一番はじめに借りることができたぶどう園。

いわば「なかがわ葡萄園発祥の地」です。だから一番思い入れもあります。

思えばわたしが借りているぶどう園は、みんないいぶどう園です。木の状態もいいし、ぶどう棚の状態もけっこういいです。園地を借りるときに運が悪ければそれこそ廃園に近いような、木も棚も状態が悪いひどい園地があったりするのですが、わたしは本当にいい地主さんに巡りあえています。感謝感謝です。

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れはプルーン園。

5種類54本の苗木を植えて2年が経ちました。

来年は少しは実がつくかな??。

来年が楽しみです。


て11月は1年で一番のんびりできる(人間も、木も。)時期です。

フィールドに出て仕事をするのは1ヶ月のうち半分くらいでしょうか。

仕事は地面のお世話。そう土づくりです。

土壌診断を毎年やっているので、その結果に基づいた施肥設計をやっています。

特にリン酸やカリが過剰な園が多いので、余計な肥料はやらないこと、肥料をやるというよりバランスを整えること、を心がけています。

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これが堆肥。牛糞完熟堆肥です。

微生物いっぱいのふかふか土づくりのためには堆肥は欠かせません。

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11月1日のピオーネ園です。

何の変哲もない風景ですが、実は新しいことをひとつはじめました。

それは草生栽培です。

10月の終わりにまいたライ麦が発芽してきています。

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ここはもともとが田んぼで、地面がずいぶん硬い感じがするので、草を生やして根を深くまで伸ばして土壌の物理性や通気性を改善したいと考えています。

今はピオーネ園なのですが、新品種「黄華(オウカ)」の苗木を15本植えています。

この「黄華」、松本の篤農家にして育種家の大村嘉汎氏の手による純粋なヨーロッパ種のぶどうで、黄白色で大粒の、種無しの、しかも皮ごと食べられるというすばらしいものです。

デラウェアに続く次代のブランド品を創出するべく、今地域をあげてこの「黄華」の育成に取り組んでいるところです。

わたしのこのピオーネ園、黄華が大きくなるに従ってピオーネは切り縮めていきます。最終的に数千の黄華がぶどう棚にぶら下がる風景は、今から想像するだけでワクワクします。

1月からこのブログを担当させていただいて、どうにかあと一回を残すのみとなりました。この1年は自分の国語力、表現力の拙さに我ながら呆れ返る1年でもありました。

それでも読んでいただいた方がいらっしゃったのかと思うとうれしいやら恥ずかしいやら...といった気持ちです。

それでは来月までごきげんよう。

この記事を書いた人

長野県松本市の東部高原で各種のブドウを生産する果実農家の中川 敦さん(47歳)が、月々の農事を綴ります。

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