中川さんの農事録
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おいしいブドウができるまでの農事録 第8回

連載※長野県松本市の東部高原で各種のブドウを生産する果実農家の中川 敦さん(47歳)が、月々の農事を綴ります。

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んにちは。

8月です。

1月からこのブログを書かせていただいて
あっという間に8ヶ月が過ぎて
いよいよ「収穫シーズン」が
はじまろうとしています。

自分なんかにブログなど書けはしないと
当初は思っていたのですが
栽培記録のつもりで
原稿を書いてきたおかげで
どうにかここまで
くることができました。

毎回読んでいただいている方も
いらっしゃるようで
とてもうれしく思っています。

上の写真は、8月1日の第2デラウェア園です。grape1.gif

さて、先月から撮りだめしておいた写真で
さっそく今月の農事録...。

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2枚は同じ場所で撮影したもの。

定点観察。左は3月26日。右は7月11日。

の太い木は、第1デラウェア園の中段を支配する40年ものの老木です。樹形はさすがにもうめちゃくちゃですが、今年もいたって元気。人間で言えば80歳くらいかな..。

同じぶどうでも、若い木だと、食べた時に酸味と甘みが分離して感じられるのですが、この木の場合、酸味と甘みがブレンドされて、一体となっている感じがします。

円熟の味とでもいいましょうか。食べ比べてみれば違いがよくわかります。

て、3つのデラウェア園で傘かけが終了したのが7月7日。全部で24,900の傘をかけました。ということは24,900房かぁ。。。すごい数です。

そのころになると、棚面には葉っぱが生い茂って、場所によっては地面に光りが届かないほど、真っ暗になってしまいます。

デラウェアは、房に陽光がほどよく当たらないと着色が悪いので 棚面を明るくしてあげます。

今年伸びた新梢から腋芽(ワキメ)が出て、それが伸びて生長して真っ暗になっているのです。これを副梢(フクショウ)といいます。

その副梢を、特に暗いところを中心に、ハサミや手でボキッボキッっとカットします。

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副梢整理前 フラッシュをたかなければ写せません。地面に寝転んで上を見ると、葉っぱが1箇所に4枚も5枚も重なっているのがわかります。

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副梢整理後 明るさの目安なんですが、葉っぱが2枚重なるくらいがちょうどいいと言われています。地面は落とした副梢でいっぱいになります。棚が暗いと、着色が悪いのはてきめんなのでけっこう気合をいれて全園を思い切り明るくしました。

そのことは去年と全く同じ。ところが今年はそれが裏目に出てしまいました。いつたいなにかというと、それは...今年は「特に暗いところだけ」を「ほどほどに明るくするだけ」がよかったようです。

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7月16日。着色がはじまりました。房全体がいっせいに色づいていくのでなく、「飛び玉」といっていくつかの粒から色づいていきます。

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ちら7月16日の巨峰。今年は房を小さく小さく作りました。粒の数にして約30。それでも最後は500グラムくらいの立派な(?)巨峰になるんですよ。摘粒で思い切り粒を抜いたのですが、だんだんすき間もなくなってきました。

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巨峰の摘房。房落としです。

今、1本の新梢に1つの房がついているのですが、もったいないという気持ちをぐっとこらえて、房を落としていきます。適正な着果量になるように。

果物ならなんでもそうですが、単位面積当たりの着果量は、少なければ少ないほど、味がのったいいものが出来あがります。またその品種固有の着色にしてもそうです。

着果量が多いと、巨峰などまず真っ黒になりません。味も薄いし。さらに着色の難しい赤系の大粒種などの場合は、着果量を巨峰の半分以下にしないと、赤くなりません。

といって着果量は収入に即結びつくことなので、単位面積当たりの着果量をどのあたりにもったいくかということは、それぞれの農家のスタイルによって違います。

私の場合は最も平均的。新梢2メートルに房ひとつの感じになるようにしています。例えばそこに1メートルの新梢が2本あるなら、そこに房ひとつ、2メートルの新梢が2本あるなら房ふたつ、という感じにします。

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摘房が終わったら次は袋かけ。目的は害虫よけ、病原菌よけです。雨水や小さな小さな害虫が、侵入してこないように、首元をがっちり締めるのがこつ。

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西日が、直接当たるところは、さらに日よけの傘をかけました。日焼けしないように。

て、デラ姫たちはどうなっているでしようか?

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7月25日。着色がすすんでいます。

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しかし、傘をめくってみるとこんな感じで、日焼けをおこしている房がずいぶんあります。

今年は梅雨明けが去年より10日以上も早く、――といっても平年並みですが――その後強烈な日ざしの日がしばらく続いたので、棚面がちょっと明るすぎるところは、ずいぶんやられてしまいました。今年はまだちょっと暗いかなぁ、もうちょっと明るくしてあげようかなぁ、というくらいがちょうどよかったようです。

なかなか毎年同じようにはいきません。

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こちら7月25日の巨峰。袋をとってみると、ほら着色がはじまりました。飛び玉です。

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8月1日のデラウェア。

昼に最高気温が高いのはいいとして、夜の最低気温がもっと下がってほしかったころでした。

この時期、ぶどうがなにを一番求めているかというと、昼夜の気温の寒暖差なのです。寒暖差が大きければ大きいほど着色がよく、また酸味が早く抜けて糖度も増します。

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8月1日の巨峰。飛び玉飛び玉。

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気の早いのはもう全体が色づいています。

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全景。この巨峰園には約4500の巨峰がなっています。

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さて、収穫間際の8月8日のデラウェア。糖度はもう19度あります。着色もまずまず。この房、オイシソウ..

初穫りは8月11日と決めました。

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そろそろ収穫・選果・箱詰めの準備。自宅の八畳間がシーズン中は作業場に。壁面は組み立てた出荷用の段ボールでいっぱい。

みなさん、デラウェアは松本・山辺産のものを買ってください。

はっきり言って、、、おいしいです。

山辺のデラウェアは、他産地のものと比べて、粒がやや大きいことが特徴です。

それではまた9月にお会いしましょう。

今度は真っ黒になった巨峰を見ていただけると思います。

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長野県松本市の東部高原で各種のブドウを生産する果実農家の中川 敦さん(47歳)が、月々の農事を綴ります。

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