中川さんの農事録
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おいしいブドウができるまでの農事録 第2回

連載※長野県松本市の東部高原で各種のブドウを生産する果実農家の中川 敦さん(47歳)が、月々の農事を綴ります。

grape1.gif月になりました。暖かい日が多かった去年の冬と比べ、今年は雪が多く、また最低気温が氷点下10℃くらいになる日も何日かあって、ただいま冬本番。それでも日曜日と雪の日を除いてほぼ毎日フィールドに出勤しています。寒くてきりりとした空気が身を引き締めてくれます。でもこの凛とした空気がけっこう好きだったりします。

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ようこそ、こちらがわが家の第1巨峰園。

それでは今日は第1巨峰園における真冬の剪定の写真を見ながら話を聞いてください。

1巨峰園は松本市中心から美ヶ原高原へと続く県道沿い、山辺ワイナリーの近くにあります。いくつかある自分のぶどう園の一番中心に位置し、一番広く、また水場、農機格納庫、物置小屋、リラックス用兼ご来客用テーブルイスセット完備の、自分の仕事のベース基地となっています。

ぶどう栽培をはじめてみてはじめてわかってくることがいろいろあって、その最たるものに水場のあることのありがたさがあります。ここは川の水を引いているのですが、ずばり防除作業、農薬等散布には水が欠かせません。量ったことはないのですが1年間に10,000リットル以上は使っていると思います。ここに水場がなければ、どこかで水を用立てないといけないわけで、片道10分といえど軽トラ通勤農業者の身としてはここに水場があることが大助かりです。

それから行政(市役所政策課、農政課)、新規就農相談センター等とおつきあいをさせていただいているご縁で、昨年からご来客の方がずいぶんお見えになるようになりましたが、そういう方々をはじめにご案内するぶどう園が必要だったわけで、そのためにもこの巨峰園は大いに役立っています。

ここでの仕事がない日でも、リラックスするために、日に1回はやってくるでしょうか。この園をお借りして4年目になりますが、地主さんもとっても良い方で、いいご縁だなぁとなにかにつけて心底そう思っています。

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て1月中旬から巨峰の剪定をやっています。デラウェアの栽培についてはこれまでの3年間でツボというか微妙なさじ加減みたいなものが何となくわかりかけてきたのですが、巨峰については今大きな壁にぶつかっているような感じがしています。

教科書通りにやっても教科書通りになってくれないからです。一言で言うと、樹勢のコントロールが難しい、上手にできない、ということです。

種なし巨峰には6月にジベレリン処理という重要な作業があるのですが、これがけっこう木に負荷をかけます。そこで樹勢を中庸からやや強めに管理しないといけないのですが、強めを意識するあまり年を追うごとに樹勢が強くなっているようなのです。今では全体がやや強めからとても強めの状態になってしまっています。

葉っぱがない今、枝が縦横無尽に棚面を走っているのですが、その枝の長さ1.5〜2メートルくらいが理想であるのに対し、3メートルも4メートルもある枝のなんと多いこと。切る枝の量が多いので剪定というより焚き木作りという感じになってしまっています。

1年間の管理全般を通して全体にもっと樹勢を落ち着かせてあげないといけません。1本1本性格違うし、ふわぁ、大変だぁ〜。

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さあ剪定です。太枝にできるだけ近いところの枝を種枝(タネ枝=芽が出て房がなる新梢が出る枝)として使います。残す芽の数は枝1本につき3〜5つ。
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強めの樹勢の木は芽数を多く残し、枝の数も多く残し、剪定による反発力を弱めてあげます。
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こんな芽がついているんですよ。
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枝の切り口には乾燥防止(枯れ込み防止)のために切り口癒合剤をハケで塗布しておきます。
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27アールの広さとなるとさすがに剪定のやりごたえもあります。
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この第1巨峰園は「紫玉(しぎょく)」「高墨(たかすみ)」という早生品種の巨峰に全面改植中。5年がかりの大仕事です。
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この第1巨峰園、昨年夏はこんな様子でした。これでざっと約8,000房の巨峰を収穫しましたよ。

野県は昨年は全般的に果樹が不作の年でした。松本・山辺地区も例外ではありません。自分の巨峰も特にそうでした。粒が真っ黒にならないもの、裂果してしまったもの、500グラムの房を目指してつくっても700グラムになってしまったものなどなど、悪い見本のオンパレードでした。

しかしそれでも思い通りにできたものもずいぶんあり、この違いの原因はなんだ? なにが違うのだ? といろいろ考えたり木を調べたりするうちに「なるほどなぁ」と納得するポイントがいろいろ見えてきました。

「今年が当たり年であるように!」と祈りつつ、いろいろな方に「オイシイ!」と喜んでいただける巨峰を絶対つくるゾと、決意を新たににしています。

みなさまどうか、応援してください。

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長野県松本市の東部高原で各種のブドウを生産する果実農家の中川 敦さん(47歳)が、月々の農事を綴ります。

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