古田さんの農事録
[古田さんの農事録]

農業が好き!地域が好き!古田さんちの安曇野LIFE:14

古田さん農事録

 

やはり、例年より10日ほど早く生育が進んでおります。
弐七農園のふじの発芽は、(多分)3月27日。昨年は少なくとも4月に入ってからでしたからね。
生育がこんなにも早いと、いろいろと困ることがあるんです。

まもなく摘み仕事が始まります

古田さん農事録

 

まず、作業を急がなければなりません。
りんご屋の作業は、当たり前ですがりんごの生育に合わせて変わっていきます。
その始まりは、芽から葉っぱがちょろっと顔を出す"発芽"ですが、おそらくこの農事録が掲載される頃には、しっかりとした蕾ができていて、もしかしたら早い花が咲いている可能性もあるでしょう。
と、数日前に書いたところ、昨日4月24日の時点で満開になってしまいました。

古田さん農事録

 

蕾がしっかりとできたら、もう摘み仕事(摘蕾、花摘み、摘果)が始まります。
単純に言えば、摘み仕事が早ければ早いほど、残す実へ養分が集中し、りんごの品質は良くなります。
生育が10日早ければ、摘蕾のスタートも早くなり、それまでに片づけてしまいたい仕事を急がなければなりません。

そして、開花すれば、花が咲いている時期にだけ行える、短期決戦の受粉作業が待っています。
ハチに任せてしまってもりんごは生るのですが、人の手でしっかりと受粉させてやることで、均等に種の入った、形のきれいなりんごの割合を上げることができるのです。

ま、この辺りの作業はまだですから、来月の農事録に書けたらと思います。

兎にも角にも、作業が間に合わない!
昨年も先週あたりで接木作業に没頭している様子を農事録に書いたのですが、今年は温かいため苗の生育も早く、接木の適期は逃してしまいました。
それでも、穂木も台木もあるので、ダメもとで接いでみたものの。。。
うまくいくといいのですが。
とにかく、ちゃんと肥料をあげて、育ててあげないといけません。(昨年やりきれず、生育不良。。。)

古田さん農事録

 

地面に落ちた枝をどう拾うか・・・

接木の前には、剪定で地面に落ちた枝を拾っておりました。
おそらく、枝拾いが一番嫌いな仕事。
どうにか楽なやり方は無いものかと、毎年悩んでしまいます。
昨年、レーキを使って木の下にある枝を全て通路の真ん中に持ってきて、一輪車に拾い集めながら束ねていく方法が、腰の負担もひどくなく都合がいいことが分かったのですけれど、今年は状況が変わってしまいました。
木が弱っていたため秋と春にたっぷりと肥料を撒いてあげた影響と、異常な高温で植物全体の生育が早く、4月頭には地面が青々と茂ってしまい、枝をかき集めることができなくなってしまったのです。
結局、手間も腰への負担もかかりましたが、這いつくばって枝を集めました。
うーん、うまい方法無いでしょうかねえ。

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雑草旺盛

助け合いのカタチいろいろ

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そんな忙しい中ですが、助け合い作業もありました。
まず一つ目が、友人の畑に苗を350本ほど定植する作業!
注文していた苗が来るのが遅れて、短期間で植える必要があったところ、仲のいい生産者7人で半日で植えてしまいました。
やはり、人数がいると本当に作業が早い!
しかも、みんなやり方がわかるから、どんどんと(勝手に)作業が進んでいきました。
困ったときはお互い様。

古田さん農事録

 

お礼に、園主の友人が育てたブドウで初めて委託醸造したというスパークリングワインをいただきました! こういったお礼も、農業者ならではですね。
俺の誕生日にでも開けようと思っているので、楽しみ!

そしてもう一件は、まったく逆の仕事。
管理しきれなくなって数年経つ、いわゆる放任園のりんごの木の伐採です。
園主が病気で作業に出られなくなってしまい、2、3年放置されてしまっていました。
車通りの多めな農道に面した畑で、りんご作りを知らない人が見たら「わあ、自然栽培のりんご園。。。じゃなくて荒れてるだけか」と思う見た目。
小倉地区のイメージに悪い影響があるだけでなく、病気の巣窟となってしまっているため、隣の畑にまで病気が移り、何本も泣く泣く伐採せざるを得ない状況になってしまったようです。損失額は、、、考えると気の毒になってしまうので止めましょう。
この度、園主から伐採の承諾があったため、部会員で集まって作業することになりました。
もちろんボランティアですが、集まったのは20人くらい!
自分の畑も忙しいはずですが、それだけみんな危機感を持っていたということでしょう。

古田さん農事録

before

古田さん農事録

after

木もわけわからない感じになっていますが、草や蔓、ゴミもすごく、結構苦戦・・・。しかし、マンパワーでなんとか1日で伐採することができました。
あとは、誰か借りて耕作するのかな。。。
伐採までは済んでいるとはいえ、荒れた畑の片づけや棚の修繕も必要だと思うと、なかなか手が出ないのが本音でしょうか。
「古田君やらない?」と何度も聞かれましたが、まあ厳しいっす。

正直な話をしますと、小倉地区には俺の世代のりんご生産者が結構いるとはいえ、高齢化がすすんでおり、辞めていく農家の方が多いのが現状です。
荒地にしないために、若い農業者がどんどん借りることが必要なんだと思いますが、手が回らなければ結局荒らしてしまうことになりますし、作業が遅れていいりんごが穫れなければ利益も上がりません。
どうせ規模を拡大するなら、ちゃんと管理されてきた畑の方がすぐに収入につながりますから、そういった畑が出るのを待っていた方が得策。絶対今後出てくるし。
基本的に農業はボランティアではありませんし、生活がかかっている生業ですので、無い袖は振れず、今は自分と家族の暮らしを第一に経営計画を考えております。

ひとりひとりの作業がどこかで繋がっている

さて。
こういった助け合い仕事のことや、荒れた畑のことなどを考えると、農業って個々が全く別々に活動しているけれど、決して無関係ではないんだ、と強く感じます。
元々の意味は違うようですが、「STANDALONE COMPLEX」という、昔のアニメで使われていた言葉が農業にぴったりだと俺は思っています。
農業者ひとりひとりは、それぞれの方法やこだわりを持って作業しています。
しかし、どんなにSTANDALONEだと思って作業していても、畑に壁や屋根は無いので、同じ空間で他者と事業を行っていることになりますよね。
隣の畑への影響も考えないといけませんし、共通の設備や水源を利用していたりもします。
さらには、例えば「安曇野のりんご」のようなブランド力の恩恵を、知らないうちに受けていることもあります。
周りの農家と関わりたくない、と考える人もいますが、人間が触れ合わなくてもなんやかや影響し合う、COMPLEXな関係だと言えるのではないでしょうか。

よく、都会の人間関係に疲れて田舎で農業を。。。みたいなことを聞きますが、田舎で農業をする方が、人間関係が複雑で大切になってきます。
先に書いたように、「関わらなければ大丈夫」は物理的に通用しないでしょう。
逆に「仕事だけの付き合い」と割り切れる都会的な人間関係の方が楽な場合もあるはずです。

で、俺は仕事を超えてまで影響しあうような、そんなウェットな人間関係の中で楽しく暮らしていきたくて、農家になりました。
なので、その辺を楽しんじゃっています。

先日、他業種で独立を目指している友人と話す機会がありました。
どうもその業界は、基本的にお客の取り合いになるので同業他社は敵という意識があり、結構ギスギスした関係になってしまうのだとか。だからどの業界かは伏せます。
まあ、普通同業他社ってそうですよね。リアルライバルですから。
でも、農業は違うんです。特にうちのような家族経営の規模ですと。
自分たちのりんごが売れるのは、もちろんおいしいからというのはありますが、それ以前に「安曇野のりんご」というブランド力があるからです。
そのブランド力は、今までの先輩方が作ってきて、俺たちが守りながら向上をねらっている宝物。
地域の同業他社(他者)がダメになったとしたら、その分の収入がうちに入るのではなく、出荷量の減少もしくは品質低下によってブランド力が落ち、うちの収入が落ちる可能性もあるのです。
逆に、同業他者がそれぞれ(STANDALONE)がんばることで、ブランド力が上がり、地域全体(COMPLEX)の収入が上がることもあるでしょう。というより、俺たちはそれを目指しています。

JAを否定するわけではありませんが、なんでも(規格や出荷を)統一してやろう! という必要はないと思っています。
各々が勝手に本気で、かつ他者を認め合いながら頑張ることで、地域の作物の価値を高められたら最高ではないでしょうか。

いつもどおりまとまりませんが、この辺で納めさせていただきます。

古田さん農事録

 

保育園に行き始めました!

さいごに、恒例になってきた、我が家の坊のコーナーを。
先日、枝を燃やしていてお昼に家に帰れなかったとき、家族で畑でお弁当を広げてお昼にしました。
最寄りのピクニック会場ですね。
ご飯が終わると、シートの上にじっとしておらず、芝生の上に這い出してしまいます。

古田さん農事録

 

そんな坊も、保育園に行き始め、すぐに初めての発熱。その後、もう一度発熱。
どんどん菌をもらって強くなってくれ。
そういえば、牛舎に行くといろんな菌をもらって強くなると聞いたから、近所の酪農やってる友達のところにでも遊びに連れて行こうかな。

日々の畑・りんごの様子やもろもろは、ブログ「りんご屋さん 弐七農園」もご覧ください。

それではまた来月、お会いいたしましょう。

この記事を書いた人

古田然さん

北アルプスのふもと安曇野市三郷小倉で3年間の研修を経て、2017年にりんご農家として独立した古田然さん。
農業が好き! 人が好き! 地域が好き! な古田さんが、安曇野の暮らしをつづります。

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