野菜

直売所で売られていたフダンソウを育てた人

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「野菜直売所」と聞いただけで少しうきうきしませんか? 地域によって、また時季によっても売られているものが違っていて、この季節は行くたびに発見に出会えます。今回はJAながの長沼農産物直売所アグリながぬまで、ふと目にした「フダンソウ(不断草)」と書かれた不可思議な野菜に、眼が釘付けに。

フダンソウ? 名前からして耳慣れない名前です。ルックスはその地味な名前とは対照的に、カラフルな葉柄部と、ホウレンソウのように濃い緑色で光沢をもつ葉の大きさに、半歩後ずさりしそうになるほど。その野菜は、買って食べてみようと思うにはあとすこしの勇気を必要としたので、まずはその正体を探るべく「フダンソウ」を追いかけてみました。

またの名前はスイスチャ―ド
「フダンソウ」という和名をもつその野菜は、調べてみると「スイスチャ―ド」とも呼ばれる西洋野菜のひとつでした。名前の由来は、次々と若葉を出し、種まきの時季をずらせばほぼ1年中収穫できるものであるからだとか。耐暑性があって、夏に採れる野菜として、だいたい今ぐらいの時期から収穫がはじまるようです。サラダにしても炒め物でもおいしく食べれるのだとか。

fudanso_b.jpgこのフダンソウを栽培していたのは、県北部・標高330メートルの長野市豊野町に住む善財三枝子(ぜんざいみえこ)さん。Uターンによって神奈川県からこの地に戻り、早期退職された旦那さまを「なんとかなるわよ!」と言って背中を押して励まし、共に農業の世界へと足を踏み入れて、毎日畑へとくり出して野菜を育てることすでに10年になります。

春先の『どんな芽が出るかしら?』という一番の楽しみな種まきも終わり、初夏の畑の農作業は三枝子さんにとって気の重い、目を離すとアッという間に占領されてしまう畑での雑草と格闘する日々を迎えていました。

フダンソウはわたしのお気に入り
「畑を貸すからやってみない?」と知りあいから声をかけられて初めて農業というものへ飛び込んだ当初は、自分が大好きだった花の栽培をはじめたのですが、その花が土地の気候に合わず、人の勧めもあり、今はこの近くで湧いた温泉熱を利用してイチゴ栽培をメーンに農業をされています。

「こんなの、作ってみない?」と勧められるとつい作ってみたくなっちゃうのよ」という性格で、見回しただけでも、畑にはスティックセニョール、タカの爪、リンドウ、アスターなど、数えたことはないそうですが50種類以上の野菜や花が育っています。

「フダンソウ」を栽培するきっかけは、「本当は"ルバーブ"が欲しかったの」ですが、赤や緑色をした茎を持つルバーブは、苗がフダンソウとうりふたつで、実は手に入れた苗は、ルバーブではなくフダンソウだったのです。

ルバーブでないことが判明してからも、"七色の野菜"とも呼ばれるほど、赤やオレンジ、黄色に緑、紫などさまざまな色の茎を持つフダンソウは、畑を花壇として見ても楽しめ、また野菜として食べても楽しめるなど、すっかりお気に入りとなって、毎年楽しみに種をまいて育てています。フダンソウは病虫害の被害もあまり起こらないため、農薬をかける必要も無く、とても栽培のし易い作物だそうです。

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おかげで元気がもらえました
シュウ酸を含みアクをもつフダンソウですが、茹でても色が退色しないのが持ち味で、茎と緑の葉の部分は別々に調理するのがお勧め。カラフルな色をもち繊維の多い茎の部分は、茹でてから切って水にさらしてアクを抜き、サラダに加えれば、きれいなアクセントとして食欲をそそられる彩り野菜サラダに。また茎を除いた葉っぱの部分も、茹でてから水に放ち、お浸しや味噌汁、炒め物や和え物など。個性的な味を持たない淡白な味わいのこの野菜は、海外ではグラタンや煮込み料理などに利用されることもあります。fudanso_d.jpgホウレンソウの代用として栽培されたというだけあって、これからの夏場、体の火照りを鎮める(体を冷やす)野菜が多くなる中で、カルシウムやミネラル、ビタミンAやビタミンB1をもつ緑黄色野菜のフダンソウは、しっかりと夏場の栄養補給が出来る一品です。

「まさかこういう生活になるとは思わなかったけれど、飛び込んでみると面白い。体も痛くなるしお金もかかって大変なことは多いけれど、体を使ったほうが元気でいられる気がするし、なにより農業はとっても楽しい」と三枝子さんは温かい笑顔で話してくれました。農業の大変さを楽しみに変えてしまう、元気溢れる三枝子さんは、「もっともっとこのまわりにもみられる荒廃地を多くの人に耕してもらいたい。農業って一歩踏み出してみると楽しいわよ」と明るく話します。おかげで「フダンソウ」をおいしくいただけるようになりましたし、この前向きな姿に元気ももらえました。


アクセス:

JAながの長沼農産物直売所 アグリながぬま
長野県長野市大字穂保274−1
電話:026−295−1093
営業時間:AM 9:00〜PM 6:00
アグリながぬまウェブサイト
フダンソウは毎日販売されているわけではありませんのでお問合せください

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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