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冷めてもおいしい長野県オリジナル米「風さやか」

風さやか

須坂市の長野県農業試験場で育つ「風さやか」

5粒から始まった13年の開発史
発想の転換で普及拡大へ

お弁当やおにぎりを例に「冷めてもおいしいお米」として、このところ急速に存在感を高めている長野県オリジナルの米があります。県農業試験場(須坂市)が13年の歳月をかけて開発、2013年に品種登録した「風さやか」です。品種開発に携わったメンバーの一人に伺いました。ブランドの地位を築き上げた背景には、苦心して開発した新しい品種の普及に向けて発想の転換があったと言います。その新品種育成の舞台裏を紹介します。

温暖化対応と"信交526号(風さやか)"の誕生

風さやか

風さやかは収穫を増やすため肥料を多めに与えても倒れにくく、育てやすい。右の風さやかがまったく倒れていないのに対し、左のコシヒカリは全面にわたって倒れてしまっている(県農業試験場での栽培試験)

風さやかの開発が始まった2000年当初、長野県では夏場の高温で米の品質低下が懸念されるようになっていました。また、主力品種のコシヒカリへの作付けが集中し、稲刈り時期の労力不足なども深刻化していました。温暖化を避けることができ、コシヒカリと稲刈りが重ならない晩生の新品種が必要となっていたのです。
県農業試験場(当時は農事試験場)は2000年夏、病気に強く多収の「北陸178号」を母親に、コシヒカリの血を引いた食味が良い「信交485号(後の「ゆめしなの」)を父親に交配、新品種育成に乗り出しました。2000年秋に試験場のガラス温室で最初に実った1代目の種子はたった5粒。1年に2回収穫できる温室で種子を大事に増やし、2002年に豊科町(現・安曇野市)の現地圃場で約2000株を栽培し、その中から49個体を選抜しました。以後、試験場内で評価と絞り込みを数年間かけて繰り返し、2006年に最も優れた1系統を"信交526号(風さやかと名前が付く前の呼び方)"として選び出しました。2008年からは多様な環境条件に対応しているか確認するため、県北部の飯山市から南部の飯田市まで、県内10カ所以上で栽培試験を行いました。
こうして交配から数えること10年、信交526号は生産者の課題が解決できる優れた系統であることが確認されました。その後、長野県らしい高原に吹く爽やかな風をイメージした「風さやか」の名称が付けられ、2013年3月に品種登録となりました。

食味評価での発想の転換

風さやか

風さやかが生まれた県農業試験場のガラス温室。令和の時代を担う新たな品種育成に向けて、日々研究開発が続いている

品種開発の後半に従事した県農業試験場主任研究員の細井淳さんは、特に食味の評価に神経を使ったと回顧しています。当時、全国各地でオリジナルブランド品種が出始め、"米の戦国時代到来!"と言われていました。長野県も独自の農産物をアピールしようと2002年から「長野県原産地呼称管理制度」のような先進的な取り組みを始めており、県オリジナルブランド新品種への期待も徐々に高まってきていました。
そのような時、細井さんは舌の肥えた審査委員からの参考評価を聞くため、審査の休憩時間に育種中の信交526号(風さやか)を持ち込み、試食をお願いしました。その時は期待通りのコメントは得られませんでしたが、委員の一人が「冷めてもおいしい」とつぶやいていたのを聞き漏らさなかったことが転機となりました。
「冷めてもおいしい」という言葉が忘れられなかった細井さんは、試験場の研究室に戻ると早速ご飯を炊き、炊飯器のスイッチを切ってから2、3時間後の冷めた状態での食味の評価に取り掛かりました。それまでは最高の食味となる炊き立てのご飯の食味ばかりに気を取られていたのです。風さやかの炊き上がりの粘りはそれほど強くなく、"あっさり"とした食感。その特徴がコシヒカリを食べ慣れている食通にとっては少しだけ物足りなく感じさせたのかもしれません。
ご飯の食味評価を繰り返すうち、冷めた時の風さやかは絶妙な食感であることを確信しました。ふっくら・やや軟らかめに炊き上がることで、冷めたときにちょうど良い食感になっていたことを発見したのです。

日常の場面での本領発揮と地元産のすばらしさ

日常の中でご飯を食べる場面を想像してみましょう。職場や学校、レジャーでの外出...。弁当やおにぎりが活躍する場面は、冷めた状態でいただくシーンがほとんどです。風さやかはこうした場面で本領を発揮します。
ご飯のデンプンは、冷めるとレジスタントスターチと呼ばれる難消化性のデンプンに変化します。このため、冷めたご飯は、血糖値の上昇を抑え、食べても太りにくい効果が期待できると、最近注目されています。今後、風さやかに関するこれらの研究を進める必要もありますが、冷めてもおいしい風さやかにとって、また一つ追い風が吹いてきています。
「風さやかの品種開発が始まった2000年代は、コシヒカリ一強の時代で、研究は必ずしも順風満帆ではありませんでした。しかし、そんな厳しい時代だからこそ、将来を見据えて諦めず品種開発に取り組んできました。難局を乗り越える時はいつも生産現場の方が支えてくれました。多くの関係者のおかげで県オリジナルブランドの地位が揺るぎないものとなり、消費者の皆さんも喜んでくれています。コロナ禍の今、地元の農産物の素晴らしさを改めて認識するきっかけとして、風さやかを多くの人に味わってほしいものです」と細井さんは期待しています。

風さやか

県農業試験場主任研究員の細井淳さん

風さやかの購入は、JAタウン、または、マイパール長野からどうぞ。

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