米穀

ほんもののおもちの味を知っておくべきです

shirakemochi_rice_top.jpg

「とにかくおいしいお餅があるの」と人伝えに聞いて、やってきましたその餅の故郷。ここ県南部の伊那市では、いよいよ今週からその餅の原料となるもち米の収穫がはじまろうとしていました。

そのもち米は「白毛餅米(しらけもちごめ)」というもので、長野県でも作られているのは上伊那地方のごく一部の地域だけ。その限定栽培のもち米を100%原料として作られる"白毛餅(しらけもち)"は、地元・上伊那の住民にも人気で、地元の人が食べて気に入り日常的に購入し、それを人に勧めながら口コミで広まり、さらにお土産として持ち帰った人がそれぞれの居住地に戻ってから「おいしかったから」と言って遠くから注文してくる、そんな全国に熱いファンをもつ上伊那の味なのです。

shirakemochi_rice_1.jpg

秋とは名のみのまだこんな暑い時期から、お餅の話を聞かされても、あまりそんな気にもならないかもしれませんが、でもこの餅は、訪れた時にも量販店から注文の電話が入るほどで、この地域にとっては季節を問わず−−それは連日の30度を越す暑さの中にあっても−−無くてはならない食べ物なわけで、モノが売れないという時代にあっても、この白毛餅は、生産量・販売量共に増やしているのでした。

他に比類のない餅らしい餅の味
ついては、白毛餅の味のことなど、もち米の生産から販売まで一括管理をおこなっている(有)上伊那農民組合産直センター事務局の弦巻吉春(つるまき よしはる)さんの口を借りれば08-CIMG1734.jpg

「噛んで飲み込む時の喉をまとう甘み、口の中でしっかりとお米の味がするんですよね。それはタレや衣を付けたりしないでも十分にお餅を味わっていることが楽しめる美味しさ、それが白毛餅だと思うんですよ。普通のお餅を食べなれている人が、白毛餅を食べると『こんなにお餅って美味しかったっけ?』っていうことで、気に入って好きになってくれるんです。また喉越しが良いのも特徴と思うんですけど」

と話を聞くだけで喉から手が出そうになりませんか。少し高ぶる気持ちを抑えながら、ほどよく焼き色がついた白毛餅を、試しに他の餅と食べ比べしながら、フーフー、もぐもぐ、ゴックンして、とにかく感じるのは、白毛餅が口の中でどんどんと広がっていく米のもつ甘味です。弾力だけで味わいを感じること無く、ただ食べ進んでいくだけの餅と比較して、いつまでも米を味わっていることをしっかり感じられる餅なのです。

この美味しさよ何時までも
ところが、今でこそこの多くのファンをもつこの餅も、一時は、今後食べられなくなる絶滅の危機が訪れたといいます。昔から伊那谷の一部の農家によってひっそりと栽培されてきたこのもち米は、先祖代々から、特別美味しいもち米として作り続けられ、大切に引き継がれてきたものですが、近年は栽培の困難さや生産者の高齢化などからこのもち米を栽培する人が減少していく状況にあったからです。

shirakemochi_rice_2.jpg

栽培の難しい理由のひとつが、名前にもある"毛"。この白毛もち米は穂先から長く白い毛を出しているのが特徴で、それが収穫の際には服にからみつきチクチクするのです。しかもこのもち米は通常の稲と比べて30センチほども丈が長く、ひとたび台風などに遭遇すれば稲は簡単に倒れることや、またもともと獲れる量も少ないという点など、なんとも農家泣かせのものなのでした。

shirakemochi_rice_3.jpg

低温に強い白毛もち米を、山からの冷たい水が入る田んぼの水口(みずくち)の部分に植え、他の部分にはうるち米を、と一枚の田んぼを上手に作り分けていたこの地方の田んぼの使い方でしたが、押し寄せる機械化の波によってコンバインなどで収穫を行うようになると、品種の異なる米が混じってしまうためにこのもち米をつくることが次第に敬遠されるようになっていったのです。

日本列島で最も古い餅米のひとつかも
そうではありましたが、「家で食べる分は大変でも美味しいものを」と手間を惜しまず少しだけでも作り続ける人がいたことによって、代々伝わるこのもち米が途絶えることなく現在まで引き継がれてきたのですが、実はこの白毛もち米、調べによると縄文時代日本列島に伝来した南方由来の陸稲として作られていた古代米と特徴がよく似ているそうで、稲穂に長い毛がはえる、稲の丈が長い、収穫量が少ない、といった点などまさに原種に近いままの状態で、今なお残っているとても貴重な米であります。そしてまた、収量を増やして作りやすいように、うるち米との掛け合わせによる品種改良によって餅本来の餅らしい味が薄まってしまっている今の餅にはない美味しさをしっかりと残しているもち米なのでした。

この貴重なもち米を、餅本来がもつ美味しさを「絶やしてはいけない。自分たちだけで自家用に食べているだけでなく、もっと多くの人に知ってほしい。なんとか商品にならないか」と取り組んだのが、地元・上伊那農民組合のメンバー。現在16軒で栽培が困難な特徴をもつこのもち米を、互いに意見交換をしながら生産者一人一人の努力によって以前より生産を伸ばし、栽培を行なっているところで、そうしてつくられた白毛餅は「昔懐かしい味だね。昔のお餅のようにコシがある」といった感想をもらうそうですが、それにしても今年のこの異常な程の暑さには、メンバーはみな予断のならない状況を感じています。

shirakemochi_rice_4.jpg

食べてみた人は納得する
「東京の人がリピーターになるってことは、東京で販売されているどのお餅よりも美味しい証拠だと思うんですよ」と弦巻さんは胸をはります。そしてこう続けました。「どんどんこの美味しさが広まっていって"餅といったら上伊那の白毛餅"と言われるようになればいい」

この白毛餅は、地元上伊那のA・コープ各店、みはらしファーム内「とれたて市場」、生産物直売所ファーマーズ「あじ〜な」、小黒川パーキングエリア、高遠さくらホテル、羽広荘などで販売されています。『最近のお餅は、どうも味が感じられなくて』と首を傾げている方、伊那を訪れた際には、餅本来の味を楽しめるこの白毛餅を味わってみてください。1キログラム入り・・・1,280円 500グラム入り・・・750円。詳しくは、上伊那農民組合産直センターまでお電話を。


関連サイト:

 上伊那農民組合産直センター
 〒  399―4511
 住所 長野県上伊那郡南箕輪村南原8306−101
 電話 0265−73−0785(平日9時〜17時)
 ホームページ(餅及び餅米の通販サイトあり)


白毛餅を販売しているところ:

・南信エリア 上伊那のA・コープ各店舗案内

みはらしファーム内「とれたて市場」
 〒  399−4501
 住所 長野県伊那市西箕輪3416−1
 電話 0265−74−1805
 ウェブサイト

生産物直売所ファーマーズ「あじ〜な」
 〒  399―4511
 住所 長野県上伊那郡南箕輪村神子柴8143−1
 電話 0265−78−0701
   (中央道伊那ICから車で5分)
 ウェブサイト

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

1283871600000

関連記事

4人のイケメンがつく「色男の力もち」
米穀

4人のイケメンがつく「色男の力もち」

伝統郷土食「凍りもち」を使ってみよう!
加工品

伝統郷土食「凍りもち」を使ってみよう!

モチ学講座 もちとわたしたちと正月と
米穀

モチ学講座 もちとわたしたちと正月と

伝える●おらほの味 五平餅はハレの日に食す
レシピ

伝える●おらほの味 五平餅はハレの日に食す

新着記事