野菜

この宇宙的な植物の姿を見たら思い出してね

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実に奇妙な植物だと思いませんか? 葉という葉がすべて落とされて、見えているのは実だけになっているためにその特異さが際立っています。枝の先端についている直径1センチぐらいの緑色や黄色やオレンジ色や黒い色の丸いもの、じつはこれ、ひとつひとつがトウガラシの実そのものなんです。レディース、アンド・ジェントルメン! 観賞用のトウガラシをご紹介します!

「はて、観賞用のトウガラシって一体、何だ!?」といういぶかる声が、あちこちから聞こえてきそうですが、写真に写されているままの特徴的な形や鮮やかな光沢、色合い、宇宙的な存在感が、生け花やガーデニング、フラワーアレンジメントなどで、今、静かな人気を呼んでいるのです。

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なるほど、なるほど。トウガラシと言われてイメージするのは、真っ赤で小さくカラカラに乾燥したものが一般的だと思いますが、写真のようにその形や色を目で見て愛でるトウガラシがあるのですから、世界は広いではありませんか。

今回はこの観賞用トウガラシについて、長野県南部にあるJAみなみ信州に出掛けて話を聞いてきました。対応してくれたのは飯田市南信濃で昨年からこれを作りはじめたという大平政廣(おおだいらまさひろ)さん(58)です。

実が熟してくると色が出てくる

「わたしが育てている観賞用トウガラシのメインの品種は、コニカルというものです。色によってコニカルブラック、コニカルグリーンなどに分かれます。今の時期はブラックとグリーンしか見られませんが、9月10日頃にはレッドやオレンジも色づき、畑はとても色鮮やかになります」

 


tougarasi-01.jpg面白いのは、レッドもオレンジも最初は緑色をしており、実が熟してくると元々の品種に合わせて色が変わってくるところ。大平さんの畑でも現在はコニカルグリーンとして出荷しているものが、色付く頃になるとコニカルレッドやコニカルオレンジとして出荷されていきます。

緑から赤やオレンジに変わる際には複数色が相まって、なんともいえず目を引き付けるのに違いありません。色は、下部のほうの実から上に向かって順番に付いていきます。ちなみにブラックは、最初が黒色で、熟すとブラウンになるそうです。引き続き大平さんに生育の流れや栽培規模などを教えていただきましょう。

今年は2万本が世に出ます


「昨年から栽培をはじめ、今年はコニカル系の苗を1400本ほど植えました。昨年、南信濃周辺で観賞用トウガラシを作っていたのはわたしだけでしたが、今年は隣の天龍村と上村地区で仲間が増え、地域一帯で5人が4000本ほどの苗を植えました。1本の苗から5本は枝を出したいと考えていますので、今年の目標は5人合わせて2万本ほどということになります。ほかの作物に比べて消毒などの手間も少なく育てやすいので、来年にはもっと地域の仲間を増やしたいと考えています」

 

「1年の流れですが、4月に種がまかれ、5月に農家に苗が配布されます。ここまではJAがやってくれる仕事です。それから植えつけをして、7月はじめ頃に花が咲き、8月に入る頃に実がつき始めます。出荷はだいたいお盆明けくらいからですね。今年からはじめた人たちは、いつになったら実がつくのかとそわそわしていましたが、いったん実がつきはじめると、そこから大きくなるのは早いですね」


tougarasi-06.jpg色の栽培割合をきめて育てる
大平さんによると、ブラックが最も出荷がしやすいそうです。理由は実のつき方にあって、観賞用のトウガラシは出荷に当たり、葉をすべて落としてしまうのですが、ブラックは一箇所に集中して実がつくため、葉を落としやすいのだそうです。

ですから出荷の手間を考えてブラックばかりに栽培が偏らないようにするため、あらかじめ色別の栽培割合を決めて育てているのだとか。さて、栽培2年目に当たり、昨年との違いはあるのでしょうか?

「そうですね、昨年は早くに植えたため、寒さと天候不順から病気が少し発生してしまいました。そのため今年はその反省を生かし、植えつけを半年ほど遅らせたためか、いまのところ病気もなく順調に育っていますよ」


で、これもやはり食べると辛いの?
ここまでお読みになった読者のみなさんの中には、当然こんな疑問を思い浮かべた方もいるはずでしょう。いったいぜんたい、この観賞用トウガラシは、食べると辛いのだろうか? 記者もその質問をする気持ちを抑えきれずに、大平さんに確認してみました。回答はひと言、

「辛いです」


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やはり同じトウガラシなわけで、辛いのだそうです。大平さんも昨年、気になって食べてみたのだとか。この辛さのせいもあってか、この辺りでは山から猿が下りてきて農作物を荒らしていくのですが、観賞用トウガラシだけは被害にあっていないのです。すでに大平さんが自らの口と舌で試されていたこともあるので、あえて記者は味覚でのチャレンジはせず、視覚で愛でるほうのレポートを続けさせていただきます。

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街中で出会ったときにはヨロシク
大平さんの作る観賞用トウガラシは、8月のお盆明けから10月まで出荷が続きます。昨年は初めての年ということもあり、市場出荷のみでしたが、今年は2年目となって地域の生産者も増えたことから、地元の直売所への出荷も検討しているそうです。

順調にいけば南信濃にある「かぐらの湯」という温泉施設に併設した直売所に出荷されることになりますので、こちらに足を運ばれる予定のある方はぜひ店頭をチェックして、色鮮やかなトウガラシを見つけてみてください。各地の花屋さんに出荷されていっていますので、このとりわけ目を引く珍しい観賞用トウガラシを、今後、街中で見かけたときには、信州にちょっと思いを馳せていただけると嬉しいです。

関連サイト:

JAみなみ信州 公式ホームページ

遠山温泉郷 かぐらの湯 ウェブサイト

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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