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田畑が育む命に歓声「田んぼの生き物観察」

あぐりの田んぼ学校

田畑はそこで作られる作物はもちろん、同時に他の多くの生き物を育む「命の宝庫」でもあります。飯田市竜丘地区で食農教育を手掛ける「あぐりの田んぼ学校」では、水田での米作りにあわせて「田んぼの生き物観察」を開催。地元の保育園児や児童を対象とした講座が人気を集めています。夏と秋に開いた講座をのぞいてみました。

次々に質問の手

梅雨の長雨が続いていた7月初め。この日は午前中、時又と竜丘の二保育園で、午後は竜丘小で観察会を開きました。午前中は雨模様のため、室内で飯田市美術博物館学芸員の四方圭一郎さんのお話。午後は四方さんのお話に続いて竜丘小5年生が日ごろ世話をしている水田に出て観察会も開きました。

あぐりの田んぼ学校

四方圭一郎さんの話を聞いたあと、園児たちは盛んに手を上げて質問

伊那谷をフィールドに『田んぼの生き物』などの著作もある四方さん。園児には自作の絵本を元にやさしく語りかけました。「チョウはなぜサナギになるの?」「なんで田んぼにカエルがいるの?」と次々に出る素朴な質問にも笑顔で回答。

あぐりの田んぼ学校

小学生向けにはスライドを交えて田んぼに集まる生き物たちを解説

児童相手にはスライドでカエルやドジョウ、ミジンコなど水田に集まるさまざまな生き物を紹介。実際のカエルの鳴き声を流すなど、臨場感もたっぷり。授業後も質問する子どもたちが集まっていました。

盛り上がる観察会

あぐりの田んぼ学校

捕まえたカエルなどを見せ合う子どもたち

続いて、普段は子どもたちが世話をしている水田に出て実地観察。子どもたちは、アマガエルやトノサマガエル、オタマジャクシ、ドジョウ、ガガンボの幼虫などを次々に捕まえては盛り上がっていました。
一日講師を務めた四方さんは「学校の水田に特に珍しい生き物がいるわけではありません。にもかかわらず、子どもたちの反応はとてもいい。ところが、その経験を基に、釣りに行くとか、昆虫採集に出かけるとか、プライベートな行動になかなかつながらないのが最近の子どもたちです。本来、どの子も持っている生き物への関心を引き出すきっかけをつくりたいと思っています」と語っていました。

秋はトンボの話から

あぐりの田んぼ学校

それから3カ月、10月初め。稲はすっかり色づき、収穫は間近。竜丘小での「秋の生き物講座」は四方さんによるトンボのお話から始まりました。タイトルの「とんぼと田んぼの約束―赤とんぼの一生」の通り、稲作とアカトンボの生態は密接なつながりをもっているのです。
日本の古名の一つに「秋津島」があるように、日本は、秋津=トンボがたくさんいる国でした。
中でもアカトンボは水田で生まれ、育つ、縁の深い昆虫です。トンボの名は一説に「田んぼ」との音の類似からとも。
そんなトンボが最近は少なくなってきました。山間部を中心に田んぼ自体が減ってきたのが理由の一つです。四方さんは20年前の飯田市三穂地区の棚田の写真を示しつつ、「今はこの風景は見られません。お米を作らなくなってしまったからです」と残念そう。水田による米作りはトンボたちの生活の場も提供していたんですね。

では、どんなアカトンボがいるのでしょうか。
「最初はアキアカネ。アキアカネより早く姿を見せ、より赤いナツアカネ。さらにノシメトンボ、コノシメトンボ。この4種類が中心」と四方さん。
「飯田市下伊那地方には全部で何種類のアカトンボがいるのかな?」(アカネ属が11種、それ以外に3種)
四方さんは子どもたちに質問を投げかけながら巧みに話を進めていきます。

「赤くないアカトンボはいるのかな? アカトンボも羽化したての未成熟の個体は黄色く、夏の間に餌を食べて体力を付けると赤くなるんだよ。ただし、これはオスの場合。メスは黄色いまま...」

四方さんは、稲刈り後の田んぼの水たまりに産卵する姿から始まるアキアカネの一生を丁寧に解説。アカトンボが減った要因の一つとしてネオニコチノイド系の農薬の影響も挙げ、一筋縄では割り切れない米作りとの関係も示唆しながら40分ほどの授業を終えました。この日も昆虫の名前の確認などさまざまな質問が出ました。

あぐりの田んぼ学校

講義の後は黄金色に成長した稲が茂る田んぼに出て観察会。この日は昼まで雨模様で気温が低めだったこともあり、トンボの姿は見られませんでしたが、子どもたちはバッタやコオロギ、クモを見つけては歓声を上げていました。

あぐりの田んぼ学校

翌週には稲刈り。はざ掛けして乾燥させ、月内には脱穀作業を行う予定です。「あぐりの田んぼ学校」では、現代のハーベスターと同時に、千歯扱き、足踏み脱穀機といった昔ながらの機材でも作業をします。同学校代表で児童や園児の農作業を支援している熊谷伊久夫さんは「米作りにはさまざまな局面がありますが、取り巻く生き物を通じて水田が作り出す自然の奥深さを実感してもらいたいですね」と見守っています。

あぐりの田んぼ学校

発端となった「あぐりの田んぼ」の脇に立つ熊谷伊久夫・あぐりの田んぼ学校代表

【あぐりの田んぼ学校】

20191023ta08.jpg都市と農村の交流事業の一環として飯田市が手掛けていたセミナー「南信州あぐり大学院」の卒業生が2002年に「あぐりの風」という組織を結成、「自分たちの手でお米を作ってみたい」と上げた声に、飯田市竜丘地区の農家有志らが応え、「あぐりの田んぼ」と名づけた同地区内の水田で実際に03、04年に米作りを行ったのが発端。05年から地元の竜丘保育園と時又保育園の園児を対象に米作りの食育を始め、09年からは同市の竜丘小学校で総合学習に組み入れられていた米作りの授業も支援している。食農教育のさきがけで、飯田市はもとより地元JAみなみ信州も巻き込んだ幅広い活動に評価が高い。今年3月、JA長野県食農教育優秀組織表彰を受けた。

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