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信州のおやき作りはまことに奥が深うござる

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久々に里帰りした人で賑わうお盆。あなたのお盆の思い出はなんでしょう? そして思い懐かしむお盆の味は? 北信濃のお盆に欠かせない、信州を代表する郷土食”おやき”もそのひとつ。現在では和菓子屋さんやスーパー、コンビニなど一年中販売されているほどメジャーになったおやきも、本来はお盆に由来する食べ物でした。昔ながらの食文化を受け継ぐ家庭では、兄弟姉妹、親戚、離れていた家族など大勢人が集まるお盆には、このおやきをたくさん作っては大皿にド〜ンと盛って振舞うのだとか。だからお盆のはじまりにあたる8月頭の1日は、おやきを作る日でもありました。

oyakinasuan_1.jpg先祖の霊を迎えるためのおやき
8月1日におやきを作る理由。それは「8月1日を“石の扉(いしのと)”といって、早朝から家族でお墓を掃除して、おやきを作り、先祖の霊を迎える準備をする日だからです。

一説には、この日は、あの世とこの世を隔てる関所・黄泉比良坂(よもつひらさか)の石の扉をご先祖様が通るといわれ、いつもは何者をも通さない頑丈で開かずの石の扉ですが、この日ばかりはおやきが通行手形のように鍵となって、扉に投げつけると扉が割れて通れるようになるのです。ですからこの日は心を込めて作ったおやきを『労せずに家へ来てください』と、お墓やお仏壇にお供えするのが大切な慣わしになっていて、そうしてご先祖様は13日間をかけてこの世に来られるのだそうです。

oyakinasuan_2.jpgそんな言い伝えを話してくれたのは、ひと目10万本といわれる県北部はアンズの里で知られる千曲市で、食文化の掘り起こしと継承のため地元の先達に聞き取り調査を行い、それを農村の行事や食文化、生活の知恵、旬の食材や活用方法など月毎に紹介した「千曲市 食ごよみ」という冊子への編纂作業を行った千曲市農村文化調査隊の代表・西村安子(にしむら やすこ)さん。


千曲川流域に伝わる伝統のおやき
大成(おおな)りの今年のアンズに、まだそのジャムやシロップ漬けなどの加工が終わらない忙しい最中の西村さんと、西村さんが所属する農村女性ネットワークのグループ”アプリコットガーデン”のメンバーにもお手伝いいただいて、千曲市全戸に配付された「千曲市 食ごよみ」に掲載の、昔からこの地方に伝わる伝統のおやきを作っていただきました。

今回作るおやきは“丸ナスのおやき”です。「おやきといえば丸ナス」といわれるほど、夏から初秋にかけて県北部の千曲川流域を中心に作られているこのナスは、軟らかくて食感が良く、中身がギッシリと詰まった味の濃いもの。そこに甘じょっぱい味噌を挟んで丸めたおやきは、モチモチとした小麦粉の皮にベストマッチの美味しさです! ナスは今がもっとも美味しい旬の味ですので、手に入った際は是非お試しを。

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丸ナスのおやきのカントリーレシピ

【材料】(20個分)

中力粉・・・500グラム、
ぬるま湯・・・350グラム、
丸ナス・・・4〜5個、
柏の葉(または笹の葉など)・・・20枚

〔A〕味噌・・・120グラム、
砂糖・・・大さじ3、
サラダ油・・・大さじ1

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【作り方】

 1.粉に温水を入れて軽くこねつけ、乾かないようにラップ等で覆いをして1時間以上寝かせます。(かなり軟らかく感じます)柏の葉は生地にくっ付かないように十分水に浸けて水分を含ませておく。またたっぷりと湯を沸かして蒸し器を使う用意をしておきます。

※加える温水は気温によっても異なりますが、夏場は少し温かい程度、冬は夏よりも温かい温度で。※生地を寝かせる時間は、夏場は短めでOK

 2.ナスは1センチ幅の輪切りにします。その真ん中に味噌を挟むための包丁を入れますが、切り離さないよう、まな板の上に箸を1本置いて切ると良いでしょう。

 3.ナスの切り目の間にアンとしての味噌〔A〕と混ぜたものを挟みます。

※味噌を入れるとナスから汁が出てくるため、味噌を挟んでから作業は手早く行いましょう。

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 4.手水(てみず=手に水)をつけ、上記1.の生地を40グラムくらいちぎり、掌の上で生地がナスからはみ出る程の大きさまでに広げ、ナスを丸ごと隙間なく包みます。

 5.ナスを包んだものを柏の葉に挟み、たっぷりと湯が入った蒸し器で15〜20分蒸します。

※葉でおやきを包まない場合は、フライパンで両面を軽く焼いておくと、蒸す時おやき同士がくっ付きません。

 6.ナスに箸を刺してみて、箸がすうっと刺さるようになったら蒸しあがり。

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 蒸しあがり次第、おやきを蒸し器から取り出しながら、一個一個おやきの葉をはがしては、また元のとおり葉の間に戻して包み直します。

※これを「い気(蒸気)があがっているうちにやるよ」というそうで、これをしておかないと食べる時におやきから葉がはがれなくなりますので、面倒でも一旦葉をはがす作業をしておくこと。

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 蒸しあがった頃合いを見計らって蒸し器の蓋を開ければ、ぷう〜んと漂う葉の爽やかな香り。そして湯気のむこうには出来立てホヤホヤのツヤツヤとしたおやきが。


今回のおやきの具は丸ナスでしたが、季節によってその中身は、野沢菜の古漬けやカボチャ、青菜、大根やおから、あんこなど季節によって中身を替えて年中楽しめるもの。そして旬の具材をたっぷりと入れて丸めたおやきは、地域によっても、焼いて蒸したり、油で揚げたり、灰の中に入れたりと、広い県内ではその作り方も様々です。

ちなみに今回おやきを包んだ柏の葉、新芽が育つまで古い葉が落ちないことから”譲り葉”とも呼ばれ子孫繁栄に縁起の良い木とされます。また自然の抗菌作用もあるようで、同様に笹やミョウガの葉なども共に昔から用いられ、これら季節の葉に包んで蒸せば、風味付けばかりでなく保存にも役立ち、さらにおやき同士がくっ付かないので立てて並べて一度にたくさん蒸すことができるという知恵も。

oyaki_pop.jpgナスのおやきには食べ方もある
そうこう話をしながら和やかにおやきを作っているうちに、メンバーの一人がおやきの思い出を話してくれました。

「物の無い時代、お盆のために新調してもらった服を着てお墓参りに行ったんです。そして家に帰りゃせず(帰ってすぐ)服を着たままおやきにかぶりついたんです。そしたらナスのおやきからピュ―と汁が飛び出て・・・新品の服を汚してしまったんです(泣)・・・。それからというもの、おやきを食べる時は気をつけるようにしていますが(笑)・・・」と。

そうそう実はナスのおやき、食べた人の中には同様の経験をした方も案外多いのではないでしょうか。ムッチリ生地の中にたっぷりと美味しさを封じ込めたジューシーなナスのおやき。かぶりつきのひと口は、どうぞ気をつけてお召しあがりください。


おやきを包んでいる伝統の知恵
熟練のお母さん達は、あっという間の素早さで次々とおやきを作っていきますが、簡単そうに見えるものでも、やってみるのとでは大違い。なかなか上手く形にまとまってはくれません。お母さん達のアドバイスが飛び交うなか、細かい知恵が随所に散りばめられていることに感心することしきりのおやき作り。

代々お母さんたちが作るおやきを子供達は何度も目にしながら、そして時には手伝いながら、口伝いに教わって伝統の技は伝承されてきたのでしょう。気温によって加える水の、量の加減や、温度を微妙に変えるなど、熟練の人でもその見極めは慎重になるところだそうですので、一度の失敗で諦めず、何度も作ってみることがおやき作り上達の道だそうですよ。

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