長野県の名水を求めて 源智の井戸まで の巻

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日本全国の名水100選(昭和の名水100選)を環境省が発表してから20年以上が過ぎた今年の6月、再び同省から「平成の名水100選」が発表されました。自然豊かなわれらが長野県では昭和の名水100選で3箇所が、今回の100選では4箇所が選ばれ、計7箇所の環境省認定の名水があります。平成の名水100選で選ばれた信州の4つの名水を巡る不定期連載の3回目として、今回は水が生まれる街・松本市の「まつもと城下町湧水群」を代表する湧水「源智の井戸」を訪れました。

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美ヶ原高原の伏流水が湧き出す街
松本は冷たい雨。木枯らしが吹きすさび、小雨振る中、長野県の中央に位置する松本市に出かけた理由は「まつもと城下町湧水群」です。北アルプスを望む天下の景勝地として名を轟かせる松本市。この松本市の市街地一帯の地下には、美ヶ原高原からの豊富な水量を誇る伏流水の地下水が脈々と流れていて、街を歩けばいたるところに井戸や湧水があり、それらのいくつもの清らかな水の湧き出る泉はまとめて「まつもと城下町湧水群」と名づけられています。

歴史ある名水の井戸へ
平成の名水100選では、それぞれの湧水の豊富な水量もさることながら、年間を通じて早朝の清掃や周囲の環境整備を自主的にする保全活動、現在も水道水源として利用されている状況などが高く評価されたといいます。選定を受けて松本市や市の観光協会では「水の町 松本」をPRすべく今年3月に「松本水巡り」というウォーキングコースマップを作成。3つの代表的コースが記されたこのマップを、JR松本駅や松本城の観光案内所でまずはゲットすることから、まつもと城下町湧水群をめぐる散歩ははじまります。今回はそのなかの代表的な湧水であり古く中世の頃から人々に利用されてきたという歴史ある名水の湧き水「源智の井戸」をめざして、松本駅前から雨の中を東に向かって歩き出しました。

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おのずと水が湧きいずる井戸
街中を歩くこと15分弱で「源智の井戸」に到着します。そこは松本市の中心街でした。なみなみと水をたたえた直径が2メートルほどの8角形の大きな井戸です。井戸といっても汲みあげる井戸ではなく、地下からおのずと水が湧きあがりあふれ出る井戸。あふれた水は、そこに誰もいなくても、とどまることもなく井戸の周囲の溝に流れ落ち続けています。まずはそこにある由来書を読んでみました。


源智の井戸

この井戸は、市内の名水のひとつで、城下町が形成される以前から飲用水として使用されていました。所有者は、小笠原氏の家臣河辺与平左衛門源智でその名をとって「源智の井戸」と呼ばれるようになったと伝えられています。genchi_well_3.jpgこの井戸の周辺は女鳥羽川と薄川の複合扇状地で市内でも有数の湧水地帯です。

天保十四年に刊行された「善光寺道名所図会」には、井筒の径は八尺、高さ九寸で「当国第一の名水」とあります。松本の町の酒造業者はことごとくこの水を使い、歴代の城主は不浄を禁ずる制札を出してこの清水を保護したといいます。

図版は「善光寺道名所図会」より「源智の井戸」のページ

江戸時代の観光案内書ではあるといえわざわざ「当国第一の名水」ということは、信濃の国で一番うまい水ということではありませんか。付近や町内の人が、記録にないほどの昔から飲用水とし、酒造りのための水として利用してきた井戸。江戸の昔にはすでに8角形をしていたのですね。昭和43年、1968年には松本市の重要文化財となり、それから20年後の昭和63年(1988年)には井戸の復元工事がおこなわれ、翌平成元年にいまのように修復がなされました。揚水量毎分およそ500リットルの自噴井戸からは、いまも絶えず水が溢れ出てきています。

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「ふ〜む、なんとも立派な井戸だわい」としきりに感心しながら、写真を撮っている間にも、水を汲みに来る市民の方の姿がチラホラ。多くの人がこの水を家に持ち帰り、お茶やコーヒー、煮焚きなどに利用しているのです。ありがたそうに水を汲むそれぞれの後ろ姿から、街の人々がこの井戸を大切にしていることがよくわかりました。

日本列島では珍しい硬水の井戸
写真を撮り終えたところで、湧き水をいただくことにしました。備え付けのひしゃくから手に移し、そっと口に注ぎます。まず手にとった時点で感じるのは、地下水という言葉からイメージしていたほどには冷たくないということです。あとで調べてみると、水温は平均で15度あるそうです。一口目で喉の渇きをうるおし、さらに二口、三口と飲んでみましたところの感想は「飲みやすい気がする」というものでした。これも後に調べてわかったことですが、「源智の井戸」の水は、軟水の多い日本列島では珍しい硬水の天然水なのだそうです。つまり水に含まれるカルシウムとマグネシウムの総量がかなり多いと言うことです。自分に鋭敏な舌と豊富なボキャブラリーがあれば、もっと上手にお伝えできるところでしょうが、まあ感想は百人百様。いずれ関心あるみなさんには、それぞれ体験して、感想を持っていただくことが一番よいかもしれません。

まつもと城下町湧水群
今回、この「源智の井戸」を訪れたついでに、まつもと城下町湧水群の他のいくつかの湧水も見てきました。源智の井戸から徒歩2、3分のところにある「伊織霊水」、そして井戸のあった料亭の名前から今もそう呼ばれる「鯛萬の井戸」、地元の酒造会社「善哉(よいかな)酒造」の前に湧く「女鳥羽(めとば)の泉」などです。これらの湧水はすべて散歩で歩いて回れる距離のなかにあります。しかしまつもと城下町湧水群はこれだけではありません。松本市にはこれらの他にもまだまだたくさんの湧水が点在し、あちこちに名だたる井戸があります。水の生まれる街、市の中心部に水源地を抱き、市民が「水環境を守る条例」を持つ都市、もしあなたが松本を訪れる機会があれば、下記のウェブサイトや先ほどご紹介した水巡りマップなどを活用して、自分だけの清らかな水体験をしてみてください。

源智の井戸へのアクセス:

住所 長野県松本市中央3
問い合わせ 松本市 市民環境部 環境保全課
       (0263−34−3267)
交通 JR松本駅から徒歩15分
駐車場 なし
休み 無休

参考サイト:

松本市公式観光ポータルサイト「新まつもと物語」(pdf版のまつもと水巡りマップもこのなかにあります)

まつもと城下町湧水群(平成の名水100選のページより)

関連過去記事:

その2 長野県の名水を求めて 木曽川源流の里の巻(2008年10月1日)
その1 長野県の名水を求めて いざ観音霊水への巻(2008年9月3日)

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