シードルひと瓶にリンゴが4つも入ってます

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クリスマスの夜。大切なのは窓から見える白い雪と、おいしい食事と、それらをいっそう引き立たせる飲み物です。本日はリンゴを発酵させてつくった口あたりのよいりんご酒「シードル」をご紹介しましょう。シードルは「cidre」と書くフランス語で、英語で読むと「サイダー」。サイダーはもともと軽いアルコール飲料だったのです。今ではいわゆる甘い炭酸水と区別するために、リンゴから作られた発酵アルコール飲料は「シードル」と呼ばれています。

長野県の東部に位置する立科町の国道沿いにあるお店「たてしなップル」(北佐久郡)の"シードル"は、田崎真也氏や高野豊氏といった名だたるソムリエも、ファッションデザイナーのコシノヒロコ氏も、そして芸能界きってのワイン好きで知られる辰巳琢郎氏も、そろってお墨付きを与えてくれている、おいしくて軽いお酒です。長野県原産地呼称管理制度にも認定されています。「たてしなップル」というお店のネーミングは「たてしな(立科町)のアップル(リンゴ)」にこだわった商品づくりをしているから。お店の入り口にある大きなリンゴのオブジェが目印。お店の命名者であり、支配人である武者文博(むしゃ ふみひろ)さんにお話を聞きました。

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このシードルがおいしい特別な理由
「たてしなップル」のシードルがおいしいのは、立科町で栽培された完熟リンゴ"サンフジ"をふんだんに使っているからです。一般的に立科町で採れるリンゴは「糖度が高い」といわれています。その秘密はこの町そのものにあります。箇条書き風に言うと、

 1.降雨量1000ミリ以下で寡雨な町であること
 2.南傾斜で日当たりが良好であること
 3.粘土質の土壌であること
 4.昼夜の寒暖の差が大きいこと
 5.まじめ、真摯な農家が多いこと

――だと、武者さんはおっしゃいます。取材の際にいただいたリンゴジュース。見ればビンの中には果肉がたっぷりと沈んでいます。このジュースの甘いこと、甘いこと! でもお砂糖は一切使っていないのです。そんな言葉も疑いたくなるくらい濃厚な「甘さ」でした。初めて飲むお客さんは全員がその甘さに驚くといいます。よくわかります。

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この「甘いサンフジ」を使うというこだわりのほかに、シードルの場合は「ビン内二次発酵」という手法がもうひとつのこだわりです。「ビン内二次発酵」とは、シャンパンを造るための伝統的な製法にのっとったもので、その製法は「シャンパーニュ製法(メトード・シャンプノワーズ)」と呼ばれます。プロセスはりんごの収穫・洗浄・破砕・一次発酵・濁引き・調合・瓶詰め・ビン内二次発酵・熟成と進みます。高品質のワインと同じようにじゅうぶんな時間と手間をかけてできあがるものなのです。

この手法をとることで、空気中にただよう多くの酵母との結びつきを絶ち、シードルを造るのに相性の良い酵母で美味しいシードルへと発酵を促すことができます。つまり、ワインにはワインに、日本酒には日本酒に、それぞれ相性のよい酵母があり、このシードルにはシードルに相性のよい酵母があるのです。それらの酵母の数を特殊な技術で微調整し、「ビン内二次発酵」させることで、余計な酵母との結びつきを絶ち、雑味がなくなるのです。武者さんはそれを「管理された酵母」と表現しました。

手間がかかりますが、この手法をとることでシードルに独特の風味と味が生まれるといいます。どうやらこれらのこだわりが、ソムリエやワイン好きをもうならせる理由になっているようです。

発酵シードルを口に含むと芳醇な香りがします。雑味のなさ、そして後からくるほどよい苦味はまさに「美味」そのもの。シードル1本(750ミリリットル)あたり約4個のサンふじが使われているのだそうです。もちろん、濃縮還元果汁や酸化防止剤(亜硫酸塩)はいっさい使っていません。完成したシードルをこの方法で作り出すまでには、失敗を繰り返したと聞きました。

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ぜひ一度「たてしなップル」訪ねてみて
「たてしなップル」の店内は、かわいらしく飾り付けられ、サンふじりんごとオリジナルの商品がすらりと並んでいます。店内にあるカフェではケーキやガレット、ピザも食べることができます。もちろん、カフェで提供されるメニューも地元産にこだわっており、シードルとの食べあわせもぴったりです。

ケーキは「アップルパイ」と「クグロフ」が定番メニューで、日替わりでロールケーキなど3種類程度のケーキがそろっています。また、スタッフの方の手作りのかわいらしいデコレーション・アクセサリーも販売しています。開放的な店内からは雄大な浅間山を眺めることができ、ゆったりとすがすがしい気分にひたれます。

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取材の最後に「たてしなップル」のリンゴ畑を見せてもらいました。お店から車で5分ほどのところです。リンゴ畑は南傾斜で日当たり良好でした。農薬を減らしたリンゴを栽培していこう、と仲間作りからはじめ、周囲を巻き込んで立科町のリンゴを売り出すために武者さんや写真の田中一英(たなか ひでかず)さんらは、精力的に活動をしているのです。

今年の「サンふじ」の収穫は11月下旬まで行われ、このリンゴは来年1月中旬にはシードルをはじめとした「たてしなップル」自慢の商品に生まれ変わります。武者さんは「お客さんと直接対話をして、商品提供をしたい」「消費者を味方にして、シードルを進化させていきたい」と目を輝かせました。

世代を超えて愛されるシードル
実はこの"シードル"という発酵りんご酒、どんな食事にもあいます。シードルはまだあまり日本では浸透していませんが、ヨーロッパでは身近な、口当たりのいい飲み物として世代を超えて愛されています。クリスマスにだけにふさわしいお酒ではありません。年末年始はもちろん、友人たちと集まる週末のパーティなどにも、これからは安心・こだわり・美味しさがそろったシードルを、みなさまの普段の食事に取り入れてみてはいかがですか。インターネットによる通信販売もあります。


たてしなップルへのアクセス:

たてしなップル
〒384−2211
長野県北佐久郡 立科町茂田井2564番地1
TEL:0267−56−3555
FAX:0267−56−3773
ウェブサイト:http://tateshinapple.jp/

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