新海さんの農事録
[新海さんの農事録]

新海さんちの農事録 最終回

連載※長野県南佐久郡川上村で高原野菜を生産する野菜農家の新海岩夫さん(57歳)が、月々の農事を綴ります。

新海さん
新海さん

度目の雪で、野も山も真っ白に雪化粧をしました。なにかやり残したような気持ちのまま、なにもかも真白い雪が覆い尽くしてくれた感じがします。
 早いものでわたしがこの連載をお引き受けして1年がたちました。レタス農家の1年をお伝えすることで、みなさまに「ああレタスってこうして作っているんだ」「こんな苦労もしているんだ」などと、少しでも理解していただき、生産者と消費者のパイプ役としてお役に立てたらと思いお引き受けしました。1年間おつきあいいただき、いかがだったでしょうか。
 7月下旬に、突然NHK教育テレビの4年・5年生を対象とした社会科番組『しらべてゴー』のチーフプロデューサーが、この農事禄をご覧になり、連絡をいただきました。取材と撮影を経て、10月5・6日にNHK教育やBS放送などで放映があり、あちこちから「見たよ」と声をかけられ、改めてインターネットでの情報発信の可能性に驚かされました。この農事録の執筆をお引き受けしてよかったなーと思っています。
 今レタスを取り巻く情勢は大きく変化の兆しが見えます。要因はいくつかあると思いますし、それらが複雑に絡みあって今年の価格低迷を引き起こしたとも思います。若い人たちの野菜離れ、消費方法の変化、百円ショップの進出などが考えられますし、輸入野菜の増加は、お米や穀物の輸入自由化とあいまって、食料自給率も40%を切るまでになってしまっています。このまま自分達の食べるものを外国に依存していってよいのだろうかと考えてしまいます。
 農業後継者の問題は、わたしの周囲を見渡しても深刻な問題ですし、高齢化しつつある人たちが日本の農業を支えている実態にあります。だからといって、ただ安いという理由だけでわたしたちの食べ物を外国からまかなおうとしている日本の姿は、本当にこのままで、将来のわたしたちの健康や安心が守れるのでしょうか。こういう状況だからこそ、生産者と消費者が手をつなぎ、将来とも「安全」で「安心」の食料生産と消費の意識の共有をするときかとも思います。
 生産者とすれば、食べていただく方々を思い、安全・安心な生産に努力し、消費者の皆様にも、ただ安いからといって外国産を買わずに、自分達の将来の健康を買うのだとお考えいただくことはできないものでしょうか。レタス1個よりペットボトルの水のほうが高い現実に、生産者は納得できないものを感じます。
「あれこれとレタス農家の思いを配信できたら」と思い悩んだ1年でしたが、わたしはレタスを一生作り続けていきたいと思っています。わたしのレタス作りの1年はこれで終わります。農事録の執筆はバトンタッチしますが、つたない文章をお読みいただきましたみなさまに、心より御礼申しあげます。

長野県の気候・冬の特徴(長野地方気象台)

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長野県南佐久郡川上村で高原野菜を生産する野菜農家の新海岩夫さん(57歳)が、月々の農事を綴ります。

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