野菜

ズッキーニの新しい世界を発見してください

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ポピュラーな野菜であるキュウリにあまりにも似てはいるけれど、この野菜はキュウリではありません。キュウリのように生で食べることはまずありません。しかし南フランスの野菜の煮込み料理である「ラタトゥイユ」、南イタリアの「カポナータ」を代表に、ヨーロッパの地中海料理には欠かせない食材。この季節のスーパーや直売所には控えめながらも必ず並べられていて、その棚に近づくと不思議な存在感すら感じるのがズッキーニ。

このズッキーニの正体を見るべく案内された場所は、長野県でも一番北に位置する下水内郡栄村。すぐ隣は新潟県です。長野市から車で1時間半。農村の原風景が広がる、心温まる景色と空気が爽やかに感じられる場所でした。

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この景観のなか、美しく耕された畑にはタヌキの足跡が続いています。海抜550〜600メートル。朝晩はなんとも涼しいところです。ここで作られる作物のひとつがズッキーニでした。今回はズッキーニを栽培しているJA北信州みゆきズッキーニ部会の部会員140名を束ねる部会長の樋口潔(きよし)さんに、話をうかがうことができました。

「これがズッキーニです」

そう言われて見えたものは、直径70センチ程にも及ぶ巨大な株で、1枚の葉っぱはとてもこわもてで大きく、その茎はセロリ―のようであり、そんな茎にズッキーニの実は、頭を下にした逆さの格好で、直接なっていたのです。

それは長野県産ズッキーニかもしれません
栄村を含むJA北信州みゆき管内は、県内でも1番のズッキーニ生産量を誇り、年間14万3000ケース(1箱あたり2キロ、平均12〜13本)も出荷します。意外と知られていませんが、このズッキーニの生産量は、県全体で633トン、なんと宮崎県に次いで第2位の生産量です。ちなみに露地ものの生産量は全国1位。宮崎県のズッキーニは冬場の出荷となる一方、長野県は夏場の今ごろに圧倒的シェアを占めます。あなたが今日スーパーの店頭でズッキーニを見たとしたら、それは長野県産である可能性が高いですね。

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もともとの原産地は6000年から7000年前の中米メキシコ。北米大陸の先住民はこれを長いこと「夏のカボチャ」と呼んでいました。その名の通りふっくらとした丸いかたちをしていたのですが、植民活動によって16世紀頃ヨーロッパに持ち込まれた以後、イタリアの農家の人たちが細長い形状に改良したもので、だから「ズッキーニ(zucchini)」という名前はイタリア語。イタリア、フランス、イギリスではずいぶんと昔から食べられてきたのです。

それは栄村の土が姿を変えたもの
低カロリー野菜の代表格で、貴重な抗酸化物質を与えてくれ、ベータカロティン、ビタミンB、葉酸、少量のビタミンCとカリウムを含みます。日本には第2次世界大戦後に1度伝来したのですがそのときには広まらず、今から30年前の1970年代ごろからようやく少しずつ出回りはじめました。最近ではイタリア料理やフランス料理の需要が増えたことから年々急激に量を増やし、今では10年前と比較して2倍以上に生産量を増やしています。

ズッキーニの栽培は、春の4月から、霜が降りる10月中旬まで。ほとんどの野菜と同じく土作りがきわめて大事な作業です。これが、その後のズッキーニの出来を左右することは歴然で、樋口さんは開口一番、いきなり「とにかく一番大変で、重労働なのが土作り」と切り出しました。

樋口さんが1回に栽培する畑は10アール。畝(うね)の長さは700メートルにも及び、長さとしては50メートルの奥行きがあります。歩くだけでもかなりのしんどさです。この広い畑にマルチを敷き、ハウスの中で種から大切に育てられた700本の苗を植えつけます。そして受粉を施し、自然の時間の流れにまかせて、収穫を迎えるのです

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目を見張るのはその成長の早さ
ひとつの株に15本程度の実をつけるその収穫作業は、朝と夕方の1日2回。最盛期となる6月中旬〜7月は、多いときで1回に700本以上を収穫するそうです。

なによりも驚くのはその生長の速さ。時期にもよりますが、この夏場の時期ですと、だいたい種を植えてから収穫までが35日。実は開花して4〜5日後にはすでに収穫に適する20センチ程の大きさに生長するのです。だからそのまま放っておくとおそろしく太く巨大に成長します。だから時期を失わずに収穫しなくてはなりません。

そして収穫を終えた畑は、樹を引き抜いて土を耕す中に混ぜ込むという、そんな1連の作業を年4回、畑を替えて繰り返し行うのです。しかし作業以上に大変なのは、「今年は肥料の値段にはじまり、種、農薬などが倍近くに跳ねあがっているけど、取引価格は上がらないこと」と言います。

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樋口さんの1日は、朝の5時からせっせと受粉付けを行う作業からはじまります。雄花の雄しべの花粉を、雌花の雌しべに付けるという作業です。これはひとつひとつすべて手で行います。これをしないと実の中に筋が入ったり、出来が良くないということなので、これもまた大切な作業です。しかも「じょうご型」をして上向きに咲く黄色い大きな花は、雨が降ると内側に水を溜め込んで花粉を流してしまうので、そのときにはもう一度受粉づけをするというなんともはや手間のかかる作業なのです

そしてこのズッキーニ、最大の敵は「風」ということで、「いよいよこれから収穫というときに茎が折れて実が飛んでいってしまうこともあるんです」と樋口さん。

想像以上にデリケートな作物
ズッキーニは、実は想像以上にとてもデリケートな野菜で、皮が軟らかいためにちょっとしたことで傷つきやすく、収穫、箱詰め共にとても丁寧におこなわれ、その後も気を使った取り扱いが要求されます。またヨーロッパなどではとくに花のついたズッキーニが、より新鮮なものとして好まれるとか。

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ズッキーニを箱に詰めるのは、もっぱら奥さんの担当で、そこはそこで腕の見せ所です。なぜなら、箱をあけてズッキーニの上に一枚被せてある紙をめくって見た時の一瞬の、その並べられた状態の美しさで、ズッキーニの価値、取引値が違ってくるのですから。

「母ちゃんにはとても叶わない」と樋口さんは照れ笑いをしました。

奥さんとの二人三脚で長野県のズッキーニを支える樋口さんに、ラタトゥイユ以外には食べ方が思いつかなくてと言うと、「簡単で美味しく食べれるんだよ」と、1日2〜3本を毎日食べるという樋口さんは即座にその料理方法を教えてくれました。

夏が終わらないうちに新しい食べ方を
油と相性が良いという特徴を生かして、さまざまな調理ができますが、簡単なのはぶつ切りのものを素揚げにしたり、また1、2センチくらいのスライスにして皿に並べ、塩・コショウをふり、その上にとろけるチーズかマヨネーズをのせてレンジで3分で出来上がり。また浅漬けにしてもいけるそうですよ。

予想外の手軽な食べ方に驚くと、「安心して安全に食べられるように農薬などにも気を配って作っているから、是非もっといっぱい、大勢の人に食べて欲しい」とおっしゃいました。

味に癖が無く、蒸しても、茹でても、焼いても、揚げても、煮込んでも、さっと火を通しても、美味しい食べ方はあなたのアイデア次第。夏が終わるまでに、ズッキーニの新しい世界を発見してみてください。

こちらは の記事です。
農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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