米穀

凍りもち――信州の寒さが作る伝統保存食

凍りもち

「凍りもち」ってご存じですか? それは信州の厳しい寒さが生んだ伝統的な自然食。今年は暖冬傾向ですが、暦の上で大寒を過ぎて寒さも一段と厳しくなる長野県北部の大町市と、南部の上伊那郡飯島町では、伝統の「凍りもち」作りが今年もはじまっています。

 

「凍りもち」は、昔は多くの家庭で作られていた保存食で、お菓子としてだけでなく、離乳食や病気の時の流動食としても最適な自然食品だとされています。ついたおもちを細長く切って、和紙に包んでワラやビニール紐で編み、2日から3日ほど水に浸した後、寒中の軒下につるして、寒風にさらして凍みた状態のまま乾燥させたもので、今でいう"フリーズド・ドライ"のような感じ? でしょうか。誰もが昔の人たちの知恵と技術に感服する伝統保存食品です。

餅つき

熟練の手で作られる凍り餅
大町市常盤須沼にある農産物直売所の「かたくり」には「凍り餅部会」なるものがあり、今月の10日から「凍りもち」づくりがはじめられています。食文化の継承と地域の活性化、米の消費拡大を図ろうとするもので、今年で11年目になりました。地元で栽培されたもち米を蒸かし、昔ながらの臼と杵でつくのは力のある男性会員の役目。餅を手返す女性会員との息もさすがです。つきあがった餅は、板で作った型に乗せて、均等に伸ばして冷まします。冷えたところで4センチ×7センチ四方に切り分ける作業を分担して行います。

 

連になる餅

切り分けられた餅は、和紙で包み、紐で5連から10連に結わえられます。結わえるところはあまりに早くてよくわかりません。コツがあるそうですが・・・連になった餅は、水の入った大きな升に入れられ、2から3日ほどつけられます。浸し終えた餅たちは、氷点下まで冷え込んだ夜間に、軒下に吊るされます。そうやって2ヶ月ほど寒気にさらされた餅は、凍り餅へと変わります。水分が無いため、1年ほど保存できるのです。

 

各作業とも分担化され、手馴れた手つきはさすが長年の蓄積。今年は通常の白餅のほか、シソ入り、ヨモギ入り、紫米入りなど合計4000連(餅40,000個)が作られるとのこと。

軒下に吊るした餅

あくまでも手作りへのこだわり
一方、上伊那郡飯島町の農事組合法人「いつわ」では、今月の17日から餅をつき、23日から餅を軒下に吊るす作業をはじめました。凍り餅の販売をはじめて3年目の「(農)いつわ」では昨年並みの3,000連(餅18,000個、もち米約1トン分)を作る予定ですが、今年はご存じのように暖冬傾向のため、昨年並みの生産量が確保できるかは、天候次第だといいます。

 

上伊那地方では4月から6月にかけて食べる保存食として、昔からこの凍り餅が各家庭で作られてきました。「(農)いつわ」では凍り餅のほか、板餅や黒豆餅、よもぎ餅など約10種類以上の餅加工品の製造販売を行っており、原料となるもち米「わたぼうし」は、すべて約7haの水田で自家栽培しています。組合長の林英彦さんは「ほんものの餅を食べてほしいから、地元産の原料で手づくりにこだわっている」と力強く話してくれました。添加物は一切使用せず、よもぎなどの原料もすべて上伊那産。3月いっぱいかけて干しあげます。

おいしい食べ方があるのです
さて、その凍りもちですが、あなたならどうやって食べます? もちろん、そのままでも食べられますよ。サクサク感が楽しめるでしょう。さらにちょっと手を加えると、食べ方は実にいろいろあります。

割りいれる 浸す トロトロ餅の出来上がり

粥にして(上の写真) 簡単でおいしいのは、まず、包み紙をはがして、割って器に入れます。次にぬるま湯か水をひたひたに入れて、待つこと2.3分。そこで余分な水を切って、さらに電子レンジで1分弱加熱します。するとほら、こんなトロトロお餅の出来あがり。砂糖をかけてもいいし、きな粉なんかもおいしいですよ。

揚げて 低温の油でゆっくり丁寧に揚げ、砂糖醤油をからめて。

焼いて オーブントースター、フライパンなどで軽く焼いて砂糖醤油をつけて、170度に熱したオーブンで30分程焼いた後、溶かしたバターを表面にからめて。焼くことで香ばしさが増してとってもおいしいのです。

きねつき凍りもち

簡単・便利・安全・安心
「凍りもち」は栄養価も高くて消化も良いので病中病後の食事として、離乳食として昔から親しまれてきました。最近では高齢者の登山者が多くなってきましたので、非常食としてポケットやザックの中に入れておくのもよいでしょう。そう、よく乾燥しており、とても軽いので、登山の際の食事としても最適です。また、お子様のおやつにもグッド。添加物を使っていないので安心して食べられます。水を多くしてゆるめに戻せば、簡単に流動食になるので、お年寄りのおやつや、病中食にも最適です。

 

あと2ヶ月ほどでお手元に
さて、この「凍りもち」の販売ですが、大町市では3月下旬から。予約はJA大北ときわ支所 電話0261−22−0209 または、JA大北直売所 電話0261−22−8839まで。上伊那では早ければ4月中旬から上伊那のA・コープ店JA上伊那ファーマーズあじ〜な道の駅花の里いいじまなどでも販売がはじまります。

 

 

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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