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今年の田植えも無事終了。富士見町編

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田植えの季節が今年もやってきました! 南北に長い長野県は、田植えの時期にもばらつきがありますが、それも中盤を過ぎ、6月初めには終了となります。
現在、国際競争力強化のために農家の規模拡大が声高に叫ばれていますが、水稲農家は小規模が多く、しかも長野県内の水田の多くは中山間地に立地しているため、効率性の追求には限界があります。いま、信州の美しい田園風景があるのは、専業農家はもちろんですが、小規模な兼業農家の支えなくしては語れません。水路の管理などを含め、地元の人々の協同作業により、水田や地域の暮らし、そして景観が守られているのです。

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冷涼な富士見町で田植え体験
5月19日に田植えを取材した諏訪郡富士見町は、県内でも冷涼な地域にあたり、標高700〜1200m超で水稲が栽培されています。昭和の時代に水田の区画整理が進み、三反ほどの田んぼが数多く広がっていますが、傾斜地に立地しているため畦畔(けいはん)という田畑を区切る畦の部分が多く、特に草刈りはひと苦労となります。
いつも5月の代掻き(水田に水を引き入れ、土を砕き、ならして田植えの準備を行う作業)時期には雨が降らずに、代掻きがいつできるのかヤキモキするそうですが、今年は例年になく雨が多いので、そういった心配はしなくて済んだということです。ただ、草が伸びやすいため、夏の草刈り作業を余計にしなくてはならないかもしれません。それにしても、畦に生える西洋タンポポの進出には目を見張るものがあります。連休には一面が真っ黄色になり、田植え時には綿帽子の種子がたくさん飛んでいました。また、近年はシカによる食害も問題となっています。

準備から田植えまですべての行程を丁寧に
ここで、田植えをする前に必要な工程を簡単に確認しておきましょう。

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4月14日に播種した水稲の種子(写真左)は、水田内のビニールトンネル(一般的にはハウス育苗も行われます)で約1ヶ月後の田植えまで慎重に温度管理をしながら育苗します(写真右)。最低気温もそうですが、特に日中の最高気温期をいかに乗り切るかがポイントとなります。本葉が1〜3枚程度の時期には、葉がロールしてしまう「ムレ苗」や立ち枯れが発生しやすく、注意が必要となります。日中の温度を25度以上にしないように気をつけ、ビニールトンネル窓の開閉で調整します。そして田植えが近くなるにつれ外気に慣らしていくのです。

taie11.jpg一方、代掻きは、傾斜地のため、水持ちをよくするために約4周ほど丁寧に行い、田植えに備えます。

そして、いよいよ田植え本番。昔は親戚総出で賑やかな田植え風景が見られましたが、今では一部をのぞき乗用田植え機での作業となり、少人数で作業している光景があちらこちらで見られます。ただし、機械植えがうまくいかない水田の四隅、天候不順や欠株などに対応して、腰を曲げての手での「植え直し」も行います。この作業は腰が痛くなりますし、泥の中を歩く作業は大変疲れます。

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田植えの醍醐味は自然とおやつ
taue_06.jpg最初は「日焼けが気になるな」などと思っていたのですが、山に囲まれた田園で、5月のさわやかな風を感じながら田植え機を運転する気分は結構気持ちのいいものです。といっても、油断してよそ見をしていると、筋が曲がってしまい見栄えが悪くなってしまいますので、慎重さは欠かせません。
そして何より楽しみなのは、畦に座り、山を眺めながらのおやつの時間。日頃、ビルの合間で暮らしている者にとっては、心が洗われます。おやつのことを「おこびる(お小昼)」といって、作業の合間に畦で、きな粉むすびやニラせんべいなど食べる地域もあるそうです。
taue12.jpg水田に水が入る時期には、夕方から夜にかけてカエルの合唱がこだまします。そしてカエルを狙って、ネズミやヘビが水田周りに住みつき、さらにそれを狙う鳥がやってきて...と、水田のある情景の背後には、人間だけでないさまざまな生き物の暮らしが根づいています。ただ、畦を歩いていたときに、カサカサとヘビが逃げていく姿を見かけたときは少々ビクリとしましたが...。

田植えのあとは...
田植え後は、低温時には深水にするなど水の管理に注意しながら、除草対策なども行います。順調にいけば、8月の上旬頃に出穂(穂が出る時期。この時期に天候不順だと収穫量に影響が出る)、9月の初めに落水(田んぼの水をぬくこと)、9月下旬に稲刈り(田植え後約4ヶ月)を迎えます。「稲刈りのときはいい天気だといいなぁ」と願いつつ、今年の田植えも無事終了しました。

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 ・水稲の種まきは一族総出でおこなうのが伝統

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農畜産物や店舗・施設の状況は変わることもございますので、あらかじめご了承ください。

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