ワイン用ブドウの丘で体験する「本物の生ハム」作り

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当記事は2015年の取材によるものです。現在の営業状況や連絡先等について当編集部にお問い合わせいただいてもお答えすることができません。ご了承ください。
 
TONYA

 

最高のワイン用ブドウを産出することで近年とみに脚光をあびている高山村。ここに一昨年「TONYA」という生ハム工房が誕生しました。
なぜこの地に生ハム工房なのか、本物の生ハムとはいかなるものなのか。2月の雪の降る日曜日、生ハムの魅力にひかれた人たちが工房に集まったその機会をとらえ、TONYA代表の佐藤明夫さんにお話を伺いました。

本物を求めるなら、自分で作るしかありません

高山村は長野市の北東に位置し、西に向かって善光寺平を望む傾斜地は、果物王国長野県にあっても特にレベルの高い果物を産出する豊かな土地として知られています。ここで本格的な生ハム作りを始めたのは、ワイン用ブドウ栽培一筋24年のキャリアを持つ佐藤明夫さんです。
佐藤さんが生ハム作りを始めたのは9年前のこと。スペイン産の本物の生ハム「ハモンセラーノ」に出合い、「このおいしい生ハムを毎日食べたい」という極めて食いしん坊的な動機によるものでした。
生ハムの仕込みは気温の関係から冬が適していて、本業であるぶどう栽培の繁忙期と季節がずれていたこともあり、工房立ち上げに踏み出しました。

TONYA

善光寺平を望む傾斜地に立つ生ハム工房。目の前にはピノノワールの畑が広がる

私たちがスーパーなどで目にする市販の生ハムのほとんどは、ラックスハム(短期熟成型)という近年開発された簡易的な方法で製造されたものですが、佐藤さんの目指したのは伝統的製法の「ハモンセラーノ」と呼ばれる本格的な生ハムです。この本格的な生ハム製造に取り組んでいる実例が日本にほとんどない中で、秋田県に理想とする長期熟成型生ハム製造所があることを知った佐藤さんは、そこに弟子入りし、4年間にわたって生ハム製造を学びました。
その後、高山村の福井原地区に生ハム専用の工房を建て、昨年から本格稼働させ、生ハムオーナー制度もはじめました。2年目となる今年は、販売用に120本、生ハムオーナー用に60本の計180本の生ハム原木(豚の後ろ足太もものかたまりをこう呼びます)が、ここで仕込まれる予定です。
この日は地元の方だけでなく、はるばる東京からもオーナーが訪れ、全部で6組の皆さんが「自分の生ハム」の仕込みにチャレンジします。

TONYA

仕込みの前後に昨年仕込まれたものを皆で味わう

自分専用の「一年後のおいしさ」を仕込もう!

一通りの説明を受けた後、いよいよ白衣を着て生ハムの仕込みに入ります。たくさんの原木から、各自お気に入りの1本を選び出し、先ずは「血抜き」。佐藤さんから太もものどこに血管があるのかを教えてもらい、手で押し出すように血を抜いていきます。この工程で手を抜くと臭みが残るなど食味に影響するので、念入りに行います。なかなか力のいる作業です。
次に原木全体に塩をすり込みます。今日参加したオーナーの皆さんの表情から察するに、全員が「おいしくな~れ」といった"念"も一緒にすり込んでいましたね。これもおいしさの秘訣かもしれません。全体が均一に塩でくるまれたところで今日の作業は終了です。
この二つの工程は1週間おきにあと2回繰り返され、その後約4日間水につけられて塩抜きされ、天井から吊り下げられます。

TONYA

仕込みに集まったオーナーの皆さん

TONYA

たくさんの中から、「これぞ」という1本を選び出す

TONYA

血抜き作業を丁寧に

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まんべんなく塩をすり込む

TONYA

塩で包み込み、仕込み1日目の作業は終了

TONYA

こちらは、2回の塩漬けを終えて塩抜き中のもの

吊り下げられた原木は熟成が進み、約1年で食べられるようになりますが、さらに熟成期間を2~3年とる場合もあります。
この日上田市から来たという女性のSさんの感想は、「生ハム作りが体験できた上に、1年後を楽しみに待つというところもまたいいですね」とのこと。なるほど、一粒で二度おいしいってわけですね。
佐藤さんは生ハムオーナーが集う「生ハム完成引き渡しパーティー」を秋に計画しており、昨年は東京のオーナーもたくさん集い、大いに盛り上がりました。高山村産のブドウで仕込まれたワインも並び、生ハムやローカルフードとのマリアージュも楽しめるので、オーナーの皆さんにとっては外せないイベントですね。

TONYA

 

高山村を、豊かな食文化が集う「夢の丘」に

ここ福井原地域は標高830m。生ハム作りに適した気温の場所を求めた結果、この地に落ち着きました。目の前には佐藤さんが管理するワイン用ブドウ畑が広がっています。
おいしい本格的生ハムができるその訳は、この気候にあることはまちがいありませんが、もう一つ忘れてはならないのが良質の原料(原木となる枝肉)が比較的近くで手に入ることです。
佐藤さんが選びぬいた原料は二つ。一つは県北部の飯山地域で育てられた「みゆきポーク」、もう一つは県東部の北佐久地域で育てられた「信州オレイン豚」です。両方とも豚の餌にこだわって飼育されており、オレイン酸が豊富な肉質が、TONYA 生ハムのおいしさを支えています。

TONYA

脂の旨味に特徴があり、一度食べたら忘れられない「TONYA」の生ハム

さて、今この高山村の斜面に、最高のワイン用ブドウと最高の生ハムがそろいました。食いしん坊精神満載で、かつ筋金入りのワイン用ブドウ生産者である佐藤さんの未来の夢は想像に難くありません。
「高山村に最高のワイナリーを」。これができることを心待ちにしたいと思います。(つかはら)

  • 福井原生ハム工房・豚家「TONYA」
  • 長野県高山村大字牧字福井2502-7
TONYA

ワイン用ブドウと生ハム工房、この両輪で高山村を盛り上げる佐藤明夫さん

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